理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 225
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理学療法基礎系
廃用性筋萎縮に対する運動効果
タンパク質分解系に着目して
*宮下 崇平坂 勝也大久保 敦子二川 健堤 恵理子浦辺 幸夫弓削 類
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抄録
【目的】免荷,安静や長期臥床による廃用性筋萎縮とそれに伴う筋力低下は,理学療法を施行する上での大きな問題点である.近年,この対策としてのストレッチングや電気刺激,荷重,低温環境などによる筋萎縮抑制効果に関する研究が行われている.しかしこれらの研究は,運動学や生理学,形態学的検討が中心で,筋萎縮を引き起こす原因となるタンパク質合成・分解経路についての報告は少ない.本研究では,後肢懸垂を用いた廃用性筋萎縮モデルに対し,筋萎縮予防のための運動を負荷したときのタンパク質分解機構の変化を検討した.
【方法】8週齢のC57BL/6雄マウスを使用した.実験群は,1)通常飼育した対照群(C群),2)後肢を非荷重状態にした後肢懸垂群(tail suspension : TS群),3)後肢懸垂に運動を負荷した群(Ex群)の3群に分け,それぞれ1週後,2週後の経時的変化をみた.なお運動負荷は,マウスの尾部に体重の75%の重錘をつけ, 傾斜80°の金網にしがみつかせる運動を20min/day,週5回行った.実験期間終了後,頸椎脱臼法にて屠殺を行い,体重を測定した後に両側長趾伸筋(EDL),ヒラメ筋(SOL)および腓腹筋(GAS)を摘出し,筋湿重量を測定した.解析は,形態学的,分子生物学的手法で行った.特に筋タンパク質の分析は Western blot法にてミオシンタンパク質発現の変化を,免疫沈降法にてユビキチン化したミオシンの発現を検出した.
【結果】1)筋湿重量: SOL,GASではC群に比べTS群,Ex群は減少していたが,Ex群はTS群より減少率が低かった.EDLでは各群とも変化がみられなかった.2)Western blot法:ミオシンの発現は,C群に比べTS群,Ex群は弱い発現を示し,Ex群はTS群より強い発現を示した.3)免疫沈降法:ミオシンのユビキチン化はTS群,Ex群で増加しており,Ex群はTS群よりユビキチン化が減少していた.
【考察】筋タンパク質の分解は,リソソーム系,カルパイン系,ユビキチン・プロテアソーム系の3つのタンパク分解系により行われている.これらの系は筋萎縮で活性化されるが,タンパク質の減少はユビキチン・プロテアソーム系が大部分を占めていることが一般的に知られている.ユビキチン・プロテアソーム系は,分解の標的となるタンパク質にユビキチンという小さいタンパクを多数結合し,これをプロテアソームというタンパク質分解工場で分解する.今回の結果より,後肢懸垂で荷重がない状態が続くとミオシンのユビキチン化が増加し,ミオシンの発現は減少した.一方,非荷重状態に運動を負荷するとミオシンのユビキチン化が減少し,ミオシンの発現減少も抑制された.以上より,筋萎縮に対する運動の効果は,ユビキチン・プロテアソーム系によるタンパク分解の抑制を介することが示唆された.今後はタンパク質合成・分解経路に着目し,筋萎縮に対する理学療法の裏付けとなるような研究を進めたい.
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© 2004 日本理学療法士協会
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