2025 年 24 巻 p. 17-26
コミュニケーションを効果的に行うために, ベッドサイドの環境調整は看護実践において重要な課題である. 本研究は, ベッド上における対象者の姿勢がコミュニケーションに与える影響を明らかにすることを目的とした. 一般的な床上姿勢とされる仰臥位および床上背面開放座位を比較検討し, 健常者を模擬患者として主観的な話しやすさおよび自律神経活動を測定した. その結果, 床上背面開放座位は仰臥位よりも主観的な話しやすさが有意に高く, 交感神経活動が抑制される傾向が認められた. 一方仰臥位では, 主観的な話しやすさと交感神経活動が有意な負の相関にあった. これらの結果から, 床上背面開放座位は仰臥位に比してコミュニケーション時の心理的・身体的負担が軽減されたことが示唆された. 本研究の結果から, 患者の「話しやすさ」を促進するためには, 患者の姿勢を調整する必要があることが示された. また, 心拍変動解析は看護現場において話しやすい姿勢を調整するための指標として活用できる可能性が示唆された.