理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 872
会議情報

理学療法基礎系
持ち上げ運動時の上肢筋活動量は物体の大きさの知覚によって予測される
*森岡 周渡邉 晴奈太場岡 英利坂本 勝哉池田 耕治宮本 省三八木 文雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】同じ重さで大きさが違う物体を持ち上げる時,小さい方が重いと感じる。この大きさ-重さの錯覚(Charpentier's illusion)は100年以上前から知られている知覚現象である。本研究では,大きさの知覚が,その物体を持ち上げるために必要な筋活動量を予測するという仮説について,大きさは異なるが同じ重量の容器を持ち上げる課題を用いて検証する。
【方法】健常女性20名(21.6±3.8歳)を被験者とした。容器は大きさの異なる2種類を用意した(小:直径23cm×高さ21cm,重量340g,大:直径31cm×高さ28.5cm,重量700g)。総重量は容器内に錘を入れて同じにし,被験者の体重の約10%とした。なお,容器内が見えないように蓋を被せた。取っ手は体幹の代償が入らない高さに取り付け統一した。被験者を大容器の持ち上げ後,小容器の持ち上げ(大→小)を1群,小→大を2群に各々10名ずつ配置した。容器の交互持ち上げを1試行とし, 課題は5試行で構成した。被験者は立位で取っ手を前腕回外位で握り,肘関節屈曲90度位まで容器を持ち上げ,その状態で3秒間保持した。1試行後,重さの違い,持ち上げ前の重さの予想について被験者の内省を記述した。筋活動の導出にはNORAXON社製Myosystem1200を用い,利き腕の僧帽筋上部線維,三角筋中部線維,上腕二頭筋,腕橈骨筋の筋腹に表面電極を貼付した。持ち上げ時の最初1秒間の積分値を求め,最大等尺性収縮時を100%とし正規化した。統計処理には対応のあるt-検定を用いた。
【結果】1試行目:小容器の持ち上げの際,1群では上腕二頭筋と腕橈骨筋,2群では三角筋と上腕二頭筋に有意な増加が認められた(p<0.05)。2-5試行目:1群では2試行の三角筋,4試行の上腕二頭筋,2群では2試行の三角筋に有意差が認められたが,その他は変化がなかった。1試行後に小容器が重いと判断した者が14名であり,大容器が重いと判断した者はいなかった。また,待ち上げ前の予想では大容器が重いと判断した者が13名と多く,その理由としては大きさの違いによるものが大半を占めた。
【考察】物体を持ち上げる時,中枢神経系の内部前向きモデルに基づき対象の感覚フィードバック量の予測が行われる。この予測が随伴発射であり,これが実際の感覚フィードバックと比較され,重さが判定される。本結果は,外部視覚情報と内部記憶から,被験者は小容器の重さが軽いと予測(筋活動量の見積もり)したが,主観的な重さの感覚フィードバックとの間に誤差が生じ,それが比較照合,修正された(運動単位の動員)と解釈でき,持ち上げ運動時の上肢筋活動量は物体の大きさの知覚によって予測されることが明らかになった。試行の繰り返しにより,筋活動量が一致しはじめたことは,正確な重さを筋感覚で知覚し,学習しはじめたことが考えられる。よって,上肢筋活動量は視覚による物体の大きさの知覚に影響を受けるが,フィードバックされた体性感覚情報に基づいて修正されることが示唆された。
著者関連情報
© 2004 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top