抄録
【目的】
関節位置覚測定で1回目と2回目の測定値が大きく異なることを経験する。この研究では関節位置覚測定の再考を目的に,転倒要因の一つにあげられるこの感覚の測定で信頼性の高いデータを得るための条件について検討する。
【対象と方法】
対象は健常人14名28肢(平均年齢21.3±5.3歳)とした。対象関節は膝関節とした。測定開始肢位は腹臥位で膝屈曲90度とし,目標とする関節角度は膝関節屈曲10度,40度,70度とした。関節位置覚の測定はBarrett法を用いた。Barrett法とは感知した関節角度をVASを用いて申告する方法である。測定には電気ゴニオメーターとプラスチックゴニオメーターを用いた。角度設定は他動で行い,検者1は被検者に装着された電気ゴニオメーターの表示が目標に達するまで下肢を動かした。その際の電圧変化と時間はオシロスコープに出力して平均角速度は一定に保った。設定角度での角度保持時間は3秒間とし,その後,被検者にはゴニオメーターを用いて角度を申告させ,検者2が1度単位で読み取った。インターバルをおいた後に上記の過程を再度施行した。疲労や学習効果を相殺するため,所定の実験割付にしたがって測定した。これらにより得られた角度をもとにICC推定値を求めた。目標とする信頼性係数をLandisらの基準を参考に0.70と設定し,得られたICC推定値の最少値をSpeaman-Brownの公式に代入した。これにより得られた測定回数で再度測定を行い,ICC推定値を求めて確認を行った。また,95% CIも求めて最終的判断の一助とした。
【結果】
test - retestで得られたICC(1.1)推定値の最少値は70度の0.53であった。これらをSpeaman-Brownの公式に代入して得られた値は2.07であった。そのため,一時的に信頼性を得るための条件を3回測定した際の平均値を用いることにした。3回測定の平均値を用いた70度のICC(1.k)推定値は0.74,95%CIの下限値ならびに上限値は0.68,0.91であった。10度と40度におけるICC推定値と95%CIも良好であった。ICC推定値ならびに95%CIとも一定の基準を満たしたので,これが信頼性を得るための条件と判断した。
【考察】
信頼性の高い真値を得ることは対象者に対するアプローチ効果などを判断する上で必要となる。今回の測定結果をもとに考えれば,関節位置覚測定において信頼性の高いデータを得るための条件は3回測定した際の平均値を用いることであると考えられた。しかし,関節位置覚誤差は角速度の相違で異なるとの報告もある。そのため,今後は他の条件でも,これが適応するのか検討する必要があると考えられた。