抄録
【目的】我々は急性期脳卒中片麻痺患者の早期リハビリテーション(リハ)を実施しており,起立訓練が自力で可能になった段階でリカンベントエルゴサイクル(エルゴ)を開始する。エルゴは下肢の交互運動を促すことから急性期主要プログラムの一環として用いてきた。急性期リハを行う場合,運動耐容能の低下が問題となることが多く,Anaerobic Threshold(AT)レベルでの運動の必要性が示唆されている。そこでエルゴと連動するDPBPを測定し,運動負荷量の定量化を試み多少の知見を得たので検討報告する。
【対象】当院で入院訓練を実施した脳卒中片麻痺患者13名。発症からリハ開始までの平均期間:2.5±2.0日。平均年齢:63.9±10.2歳。性別:男性9名・女性4名。疾患名:脳出血5名・脳梗塞8名。麻痺側:右片麻痺8名・左片麻痺5名。初回評価時の麻痺側下肢Bruunstrom Recovery Stage(BRS):1名2名3名4名5名6名。
【方法】使用機器:DPBPシステム V-305dp(旭光物産社製),リカンベントエルゴサイザー EC-3700(Cat eye社製),自動血圧計CM-4001(セルクス社製)。プロトコール:1分間の安静の後,ウォーミングアップを25Wで2分間実施。その後ランプ負荷にて15W/分ずつ漸増。血圧は15秒毎に非麻痺側上肢で測定。ペダルの回転数はメトロノームを用いて50rpmを維持。麻痺のため駆動困難な例では麻痺足を弾性包帯でペダルに固定。測定中止基準は収縮期血圧200mmHg以上、心拍数(220-年齢)以上の上昇、回転数40rpm以下、自覚症状の出現とした。測定は原則的に入院期間中、毎週一回行った。
【結果】麻痺の軽度な例では発症後7日以内に全例、測定可能であったが,中等度(BRS4以下)の例では平均23日で測定可能であった。測定不能の理由としては麻痺の重度な例では全例,回転数の不足によるものであった。一方で麻痺の軽度な例では血圧の上昇によるものが多かった。中等度の例では回転数不足と血圧上昇によるものがほぼ同等にみられた。退院時の歩行レベルは独歩4名,T字杖6名,ロフストランド杖1名,サイドステッパー2名であった。
【考察】急性期脳卒中片麻痺患者においてエルゴを用いてDPBPを測定し運動負荷量の定量化を試みた。重度の麻痺や血圧の上昇の為に測定不能の場合があるが,DPBPの測定は安全かつ効率的な負荷量の決定に役立っている。発症後早期からのエルゴの導入は歩行機能及びADLの早期向上につながる有用な訓練である。