理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 10
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骨・関節系理学療法
高齢大腿骨頸部骨折患者のQOLに影響する因子(第2報)
*前野 里恵北川 敦子栗山 信江森川 由希野田 裕太足立 徹也
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抄録
【目的】我々は第38回本学術大会において,大腿骨頚部骨折者の退院後の主観的幸福感(QOL)につき、WHO/QOL-26を用いた調査を行い報告した。今回さらにQOLに影響を与える因子について検討したので報告する。
【対象・方法】1998年1月から2002年2月までに当科で理学療法を受けた大腿骨頚部骨折手術後患者に対してアンケート調査を実施し、84/170例(回収率49.4%)から回答を得た。対象は女性71例男性13例,平均年齢76.7歳,調査時期は退院後平均1.7年であった。QOLの評価にはWHO/QOL-26を、基本情報には性別,年齢,歩行能力など11項目を用いた。解析にはCS分析(Customer Satisfaction)を用いた。これは顧客の満足度の向上に対して有効な因子を調べるといった用途に使われているものである。今回それを利用し、QOL26の生活の質と健康状態を問う「全体」領域の平均点を目的変数に、身体的領域,心理的領域,社会的関係,環境の下位24項目と基本情報11項目の合計35項目の各得点を説明変数として分析を行った。各項目の回答(満足度)は非常に悪い1点から非常に良い5点の5段階とし、各回答につき4点と5点の上位2段階の占める割合を項目の満足率、目的変数と説明変数との単相関係数をその項目(説明変数)の重要度とした。更にこの満足率と重要度の関係から、目的変数(QOL)の向上に対し各項目がどの程度の影響を持つかを計算し、それを各項目の改善度として表した。一連の処理はCS分析によるものである。
【結果】各領域の平均点は全体領域2.79点,身体的領域2.96点,心理的領域2.93点,社会的関係3.23点,環境3.26点であった。身体的領域では満足率28.6%,重要度0.60,改善度17.72であり、項目別で改善度が高かったのは仕事能力,日常生活動作,痛みと疲労であった。心理的領域では満足率33.3%,重要度0.56,改善度7.25であり、項目別で改善度が高かったのは自己評価とボディーイメージであった。環境領域は満足率39.3%,重要度0.42,改善度-11.47,社会的関係領域は満足率40.5%,重要度0.40,改善度-15.16で、項目別で改善度の高かったのは余暇活動の参加と機会,性的活動や交通手段であった。基本情報は外出状況,受傷前の生活と比較等に低い相関があった。
【考察】QOL値と相関が高く、重要であるにもかかわらず満足度が低かったのは身体的領域と心理的領域であり、下位項目では仕事能力,日常生活動作,自己評価とボディーイメージであった。これらより、今回の対象におけるQOL値の向上には、歩行能力の向上に留まらず,家庭での役割,自信や社会参加に結びつけられる幅広い観点が必要であることが示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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