抄録
【目的】大腿骨頚部骨折は骨頭壊死と偽関節の発現が30~40%と高く、転位が大きく骨癒合の可能性が低いものには人工骨頭置換術が選択されることが多い。しかし、高齢者においては重大な合併症を併発しやすく、また脱臼,ゆるみ等のリスクもあることから、近年転位型骨折に対しても適応を考慮し、低侵襲で早期荷重が可能であるハンソンピンシステムを用いた骨接合術が施行されるようになっている。今回、人工骨頭置換術とハンソンピン骨接合術の短期成績を比較し、術後の理学療法(以下PT)プログラムにおける留意点について検討したので報告する。
【対象と方法】平成14年2月~平成15年10月までに手術施行後PTを実施した大腿骨頚部骨折55例を対象とし、人工骨頭置換術実施群(以下A群79.1±7.4歳)30例,ハンソンピン骨接合術実施群(以下B群77.0±9.7歳)25例の2群にわけて比較検討した。1).基本評価項目の検討:a)受傷から手術までの期間、b)手術からPT開始までの期間、c)入院期間、d)退院先、e)歩行自立度について比較した。2). PT機能評価項目の検討:17例(A群8例,B群9例)については、術後1ヶ月の時点でのf) JOA score、g) ROM、h) 筋力、i)疼痛、j) ADLを比較し、術後PTプログラムの留意点について検討した。
【結果】1).基本評価項目の検討(N=55); a)受傷から手術までの期間:A群8.7日(8.5),B群6.2日(5)※( )内は中央値、b)手術からPT開始までの期間:A群5.8日(7),B群:6.5日(7)、c)入院期間:A群58.5日(51),B群47.0日(43)、d)自宅退院率:A群63.3%,B群76.0%、e)屋外歩行自立率(杖使用含む):A群30.0%,B群76.0%であり、両群間においてはa),c),d),e)の項目において有意差を認めた(a,c:p<0.05,d,e:p<0.001)。2).PT機能評価項目の検討(N=17); a)JOA score:A群63±10.9、B群76.8±9.5とB群において高得点を呈した。また、他の評価項目においてもB群で良好な成績を示した。
【考察】ハンソンピンは2本のピンが平行に挿入され、その先端からフックが突き出る構造をもち、骨頭部の支持性が高く骨折部に持続的なダイナミゼーションがかかるため早期荷重が可能な骨接合術となっている。その結果、早期退院・歩行自立度の向上につながり、さらに17例での比較ではあるが JOA scoreなど術後1ヶ月時点でのPT機能評価も良好な成績が得られている。その理由としては、人工骨頭と比べ低侵襲で関節固有受容器が温存される事であると推察した。人工骨頭置換術とは骨癒合を目指す点で異なることに留意すべきではあるが、ハンソンピン骨接合術は機能獲得という点では有意に治療効果が高いと判断される。術後のPTにおいても、ROM訓練,筋力回復訓練,荷重歩行訓練等の機能訓練を積極的に実施する事で、より良好な成績を収める事が出来ると示唆された。