抄録
【目的】スクワットは、筋の共同性収縮などの要素から運動中の脛骨前方引き出し力が制限されることが報告されている。しかし、運動パターンの変化による影響は十分に検討されていない。そこで今回、スクワットにおける運動課題の違いによる脛骨前方引き出し力の変化について検討した。
【方法】対象は健常青年7名14肢、平均年齢:19歳、平均身長:176.5 cm、平均体重:69.6 kgとし、スクワット時の運動解析を行った。運動課題は、静的計測として膝関節屈曲0度、30度、60度の3つの肢位にてスクワット姿勢を保持させ、それぞれ重心位置を中間位、前方、後方の順で移動し、3秒間保持させた。動的計測として、足底接地でのスクワットおよび、踵骨部を約1cm挙上させ母指球に体重を支持したスクワットを行わせた。運動の範囲は0度から70度とし、運動の頻度は2秒に1回の速さで行い、運動開始後2回目からの5回の運動について解析を行った。運動計測には三次元動作解析装置(vicon250)および床反力計(キスラー社製)を用いた。運動中の膝関節屈曲角度は、DKH社製レンジトラッカーを用いて被検者に対し常時フィードバックした。運動の解析には筋骨格モデルを用い、運動計測結果と筋骨格モデルから膝関節における脛骨前方引き出し力を算出した。
【結果】1.静的計測では、膝関節角度0度の中間位、後方および膝関節屈曲30度の後方にて前方引き出し力が発生していた。また、各関節角度間に有意な差を認め、膝関節角度の増加にともなって前方引き出し力は後方引き出し力へと変化した。
2.動的計測において、下降相、上昇相ともに膝関節伸展位で足底接地スクワットにおける脛骨前方引き出し力が母指球重心でのスクワットに比較して有意に高い値を示したが、屈曲位ではこの傾向は見られなかった。
3.静的計測中の各筋張力の変化では、大腿四頭筋は膝関節屈曲、重心の後方移動にともない筋張力が増加していた。ハムストリングは膝関節屈曲0度において重心の前方移動により筋張力は増加したが、その他の角度では著明な活動は認められなかった。
4.腓腹筋は、ハムストリングと同様に膝関節屈曲0度において重心の前方移動により筋張力は増加したが、その他の角度では著明な活動は認められなかった。ヒラメ筋は、どの膝関節角度においても重心の前方移動にともない筋張力が増加していた。
5.膝関節より上位の質量による脛骨に対して大腿骨が前方へ滑り出そうとする力は、膝関節角度が増加するにつれ増加した。
【考察】今回の結果から、膝関節伸展位では重心を前方へ移動することにより大腿四頭筋の筋活動が減少し、ハムストリングの筋活動が高まるため脛骨前方引き出し力が抑制され、膝関節屈曲位では膝関節より上部の質量による作用により脛骨前方引き出し力が抑制されたと考えられた。