抄録
【はじめに】肩甲骨と上腕骨の協調運動について挙上動作に関する多くの報告はあるが、肩関節障害で制限の生じやすい結帯動作、結髪動作、水平内転動作などにおける肩甲骨の位置や運動に関する報告は少ない。肩関節の運動障害を評価には、これらの動作時の肩甲骨運動も調べる必要がある。また、肩甲骨運動を正確に計測するためには三次元動作解析や画像解析が用いられるが、いずれも計測に時間と費用を必要とするため、臨床現場で肩甲骨の動きを計測できる簡便な手法が必要となる。そこで今回は、臨床で使用可能な手法を用いて、挙上動作以外の肩関節の各動作で肩甲骨の傾きを調べ、考察した。
【方法】対象は肩関節運動に障害がない健常男性8名16肩(平均年齢24.3±1.3歳、全員右利き)とした。測定はすべて座位で行ない、東大式角度計を用いて前額面、水平面、矢状面の3平面における肩甲骨の傾きを測定した。測定方法は高浜らの方法を一部改変して肩峰角(A)、肩甲骨1/3中枢側の肩甲棘最隆起点(B)、肩甲骨下角(C)の3点をランドマークとし、前額面上では鉛直線と直線ABのなす角(上方回旋角)、水平面上では直線ABと前額面のなす角(内方回旋角)、矢状面上では直線ACと鉛直線のなす角(前方傾斜角)として肩甲骨の傾きを測定した。測定上肢肢位は今回の手法で測定可能な安静上肢下垂位、外旋位、伸展・内旋位、水平内転位の4肢位とし、それぞれ最終可動域で保持させて測定した。測定はすべて同一被検者にて行い、肩甲骨の傾きは16肩の平均値と標準偏差を算出して表した。
【結果】各肢位での測定結果を上方回旋角、内方回旋角、前方傾斜角の順で以下に示す。(1)安静上肢下垂位:94.5±2.1,32.8±3.8,38.9±4.0、(2)外旋位:88.7±4.4,27.9±4.3,34.5±5.5、(3)伸展・内旋位:85.9±2.6,33.5±5.6,53.6±5.6、(4)水平内転位:140.4±12.2,50.8±6.2,11.3±6.9(単位:°)
【考察】今回の測定により20代男性における各上肢肢位での肩甲骨の傾きの大きさが得られた。外旋位と伸展・内旋位では内方回旋角・前方傾斜角においてそれぞれ反対方向へ傾いたが、これは肩甲骨が上腕骨の運動方向と同方向へ動くためと考えられた。水平内転では外旋位、伸展・内旋位とパターンが異なったが、これは挙上と内転の要素が混合されているためと考えられる。今回得られた資料はそれぞれの平面での位置として投影されるため、一平面における結果の比較では正確な傾きを評価できない。したがって高浜らの報告と同様に骨標本によって肩甲骨の傾きを立体的に再現すると理解しやすい。本学会ではこれらの資料を図で示し、左右差や関節可動域との相関も含め詳細に報告する。
【文献】高浜照、他:肩の動き-屈曲について-.総合リハ16(11);885-889,1988