理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 772
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骨・関節系理学療法
機能的電気刺激による対麻痺者大振り歩行再建のための筋エネルギー消費量の解析
*畠山 和利島田 洋一松永 俊樹佐藤 峰善千田 聡明巖見 武裕
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抄録
【はじめに】
 対麻痺者の移動は,車椅子を使用した方が装具歩行より速度,エネルギー消費量の面で優れており実用的である.しかし,車椅子により移動障害に関わるすべてが解決されたわけでなく,骨萎縮や拘縮,デコンディショニングなどの問題が生じる.対麻痺者の大振り歩行は健常者2足歩行より非効率であり実用的でないとされているが,近年,機能的電気刺激を用いた大振り歩行再建が報告されるようになった.また,機能的電気刺激を用いた対麻痺者大振り歩行は交互歩行より歩行速度やADL動作などが優れると報告されている.
本研究の目的は,機能的電気刺激を用いた大振り歩行再建のために,健常者での松葉杖およびロフストランド杖使用時における上下肢筋消費エネルギーをモデル計算法にて明らかにすることである.
【対象および方法】
 対象は健常成人男性13名である.年齢は平均30歳(20~53歳),平均身長173.4cm,平均体重66.2Kgである.3次元自動座標計測システムPeak Motusを用い,松葉杖大振り歩行を行った際の動作分析を行った.使用した移動補助具は,松葉杖とロフストランド杖である.反射球は肩峰,肘頭,松葉杖先端,股・膝関節外側,足関節外果,第5中足骨骨頭に貼付した.同時にKistler社製Force plateを用いて下肢及び杖にかかる床反力を測定した.得られたデータよりモデル計算法を用いて,1歩行周期における上,下肢筋群のエネルギー消費量を算出した.算出した筋は,下肢で大腿四頭筋,ハムストリングス,大殿筋,下腿三頭筋,腸腰筋,上肢で大胸筋,広背筋,僧帽筋,三角筋,上腕二頭筋,上腕三頭筋とした.
【結果】
 松葉杖,ロフストランド杖ともに大振り歩行時のエネルギー消費量は下肢筋群より上肢筋群で有意に高かった.上肢の筋消費エネルギーは,松葉杖よりロフストランド杖で有意に高かった.
【考察】
 今回は,ロフストランド杖と松葉杖を使用した2種類の筋骨格モデルを作成し,筋消費エネルギー量を算出した.その結果,大振り歩行時の筋消費エネルギー量は下肢筋群より上肢筋群が上回り,上肢筋群に多大な筋活動が強いられていると考えられた.松葉杖よりロフストランド杖で肩,肘関節の自由度が高いため,筋消費エネルギーが高かった.エネルギー消費の観点からは松葉杖使用時の方が容易に歩行可能と考えられるが,逆にロフストランド杖使用時では,関節の自由度が高いため,体重心移動の容易性や階段昇降など高いパフォーマンスを発揮できると考えられた.脊髄損傷者は循環血流量や交感神経の機能不全により上肢の筋肉には乳酸が蓄積し,限界に達しやすいとの報告がある.松葉杖使用でも上肢筋力や心肺機能を鍛える必要があり,ロフストランド杖を使用する際には更なる強化が必要と考えられた.
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© 2004 日本理学療法士協会
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