理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 790
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骨・関節系理学療法
2nd外旋における関節内衝突とコッキング後期の投球時痛との関係
*高濱 照壇 順司山田 稔晃
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抄録
【目的】投球時痛はコッキング後期の最大外旋位で生じることが多い.また健常者においても他動2nd外旋では肩後方に痛みが生じ,肩甲骨面外旋では痛みがないという現象がある.この現象がコッキング後期の痛みに関連があると考え,まず健常者に他動的な2ndおよび肩甲骨面外旋を行わせて臼蓋と骨頭の位置関係を調べた.次にコッキング後期に痛みのある軟式野球内野手に対して,痛みの部位を調べ,健常者の結果との関連を考察した.さらにコッキング後期の改良を行うことで,痛みの改善がみられたので併せて報告する.
【対象】健常男性20右肩関節,平均21.2歳であった.また解剖では熊本大学医学部の遺体2体を用いた.
【方法】対象者の体幹を固定し,他動的に2nd外旋と肩甲骨面外旋を行い,肩甲骨と上腕骨の角度を3方向から測定した.平均値をもとに晒し骨で再現し,臼蓋と骨頭の位置関係を調べた.さらに遺体により再現し,軟部組織を含めて臼蓋と骨頭の関係を確認した.
【結果および考察】2nd外旋(121°±10°)では大結節後方と臼蓋後方が接近し軟部組織の衝突が推測された.肩甲骨面外旋(126°±7°)では両者の接近はなかった.遺体での再現により確認すると2nd外旋では棘下筋腱関節包面と後方関節唇が衝突した.つまり健常人でも他動的2nd外旋では関節内で衝突が起こっており,肩後方の痛みは衝突による痛みであると考えられる.
【症例】33歳,男性,17歳から投球時に肩痛があった.1999年(29歳時)熊本国体軟式野球に出場し優勝した.その後も投球時痛は続いていた.今年6月より痛みに対して理学療法を行った.
【理学所見】他動2nd外旋で肩後方に痛みがあり,肩甲骨面外旋では痛みがなかった.中間位の水平内転で肩峰下に痛みがあった.しかし外旋位の水平内転では痛みがなかった.棘下筋と小円筋に強い圧痛があった.投球ではコッキング後期に痛みがあった.
【疼痛部位】水平内転について遺体解剖で調べると,中間位では棘下筋が肩峰下にあり,肩峰と骨頭の間に挟まれた状態になるが,外旋位では,棘下筋は肩峰下から後方へ移動し挟まれなかった.他の理学所見も統合すると痛みの部位は棘下筋であると判断できる.棘下筋に痛みが生じた原因は,前述の健常者の結果から,コッキング後期が肩甲骨面外旋ではなく2nd外旋になっているため,棘下筋関節包面が臼蓋後方に繰り返し衝突し,棘下筋が損傷を受けたものと考えられる.
【理学療法】揉捏により小円筋の圧痛は消失し,棘下筋の圧痛は軽減した.投法ではコッキング初期の2nd内旋位から外旋しながら肩甲骨面外旋位にする新投法の練習を行った.9月に測定した球速では,全力投球5球平均で旧投法より新投法の方が6km/hほど速く,痛みも少なかった.しかし旧投法の習慣から,肩甲骨面外旋の前に2nd外旋を一瞬経由するため新投法でも完全に痛みがとれなかった.
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© 2004 日本理学療法士協会
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