抄録
【目的】
肥満教室における年代別の合併疾患・体力の状態を比較し,各年代の運動処方における注意点を検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は肥満教室参加者で教室開始時BMIが25以上(25.2~38.2)の女性42名(平均年齢51.1±7.3歳)とした.教室は運動と栄養の集団・個人指導を中心に6ヶ月間行った.運動内容は自転車エルゴメーター,水中歩行などの有酸素運動(最大酸素摂取量40~60%強度)とストレッチングを週2~3回(1回合計約120分)行った.
検討方法は対象者を若年群(40歳未満)9名,中年群(40歳以上60歳未満)27名,高齢群(60歳以上)6名の3群に分け,運動器疾患と教室前後の血液検査データを含めた合併疾患,および運動で問題となった障害を3群で比較した.また教室前後のBMI,MRIによる大腿筋断面積,体重支持指数(60deg/sec膝伸展筋力を体重で除した値),最大酸素摂取量,長座位体前屈についても3群で比較した.
【結果および考察】
・合併疾患と運動で問題となった障害について
教室開始時に高齢群3名が運動器疾患(変形性関節症:脊椎・膝・足)を有していた.また血液検査の中性脂肪が高値(≧150mg/dl)の者は,若年群3名(33%),中年群8名(30%),高齢群1名(17%)で,血糖など他の検査結果にも異常値が認められた.肥満症を含めた代謝疾患は高齢ほど合併率が増すが,今回は年代による違いはなかった.終了時での中性脂肪と血糖値は全例正常値に改善し,また血圧も高血圧者27名から11名と59%の改善率を認めた.一方,教室の運動中に若年群3名,中年群7名が腰痛や股関節痛などの傷害を起こした.これは急激な運動量の増加が原因と考えられた.
・体力の特徴と教室前後の変化について
教室開始時のBMIと最大酸素摂取量に3群間で差はなかったが,体重支持指数と大腿筋断面積では高齢群が他の2群に比べ有意に低かった.また長座位体前屈は若年群が有意に低く,これは教室前の運動習慣が若年群になかったことが理由として考えられた.教室前後の変化ではBMI,最大酸素摂取量,長座位体前屈において3群すべてに有意な向上を示し,運動効果を認めた.大腿筋断面積では若・中年群で有意に減少していたが開始時の筋量が多かったため体重支持指数は正常レベルに保たれた.一方,高齢群の体重支持指数は,終了時まで筋量が維持されたにもかかわらず浦辺らの報告する日常生活レベル(0.7以上)に達しなかった.
以上より年代別の運動処方における注意点として,まず若・中年肥満者は重篤な合併症がなければ有酸素運動を中心に行い,傷害発生予防のため運動量に注意する.高齢肥満者は障害があれば障害の運動療法を優先的に進め,障害がない場合は日常生活に必要な筋力獲得のため有酸素運動にレジスタンストレーニングを加える必要があると考える.