抄録
【目的】本研究の目的は、腰椎間歇牽引の効果の一つとされる「軟部組織のマッサージ効果」について、筋弾性計を用い検証することである。また異なる牽引力における腰背部と下腿筋の筋弾性の変化と牽引力に関する主観的な感想も同時に調査した。【方法】被検者は、実験内容を説明し了解を得たボランティア学生6名(年齢:20.83±3.06歳、身長:1.71±0.09m、体重:63.42±4.39kg、全て男性)で、医療機関を受診する程はないが腰部に何らかの愁訴を有する者を対象とした。牽引装置はOG技研社製オルソトラックOL-1100を用い、下腿を台の上に乗せ水平位にした背臥位にて、30°斜め上方への間歇牽引(牽引10秒休止10秒)を10分間施行した。牽引力は、Control、体重の1/6、体重の1/3、体重の1/2の4種類を、それぞれ日を改めて行った。筋弾性の測定は、井元製作所製PEK-1を用い、それぞれ左右の傍脊柱筋最大膨隆部(胸腰部移行部、腰部、仙骨部)、左右の腓腹筋内側頭筋腹部と前脛骨筋々腹部の5つの部位(計10箇所)について、施行直前と施行直後に3回測定し平均値を求めた。求めた値で施行前後を比較すると共に、施行後の値から施行前の値を引いた値を用い、Controlとの間でも比較を行った。統計処理は対応のあるT検定を用い、牽引力に関する感想についても聴取した。
【結果】筋弾性の変化について、施行前後の比較で有意差が認められたものは、腓腹筋(Control:p<0.001、1/3:p<0.005、1/2:p<0.001)のみであった。また、Controlとの比較で有意差を認めた牽引力は無かった。また主観的な強度について、最も心地よい強度を1/3と応えた者が5名、1/2と応えたものが1名であった。さらに、個別的に観察すると、牽引により腰部の筋弾性が上昇する者や低下する者などが混在し、多様性のある反応がみられた。
【考察】今回、Controlと牽引との間で有意差が認められず、腰椎間歇牽引が筋弾性に及ぼす画一的な影響については確認できなかった。またControlと1/3、1/2牽引力の腓腹筋のみに施行前後で有意差が認められたことについては、Controlでも有意差が認められていることから、牽引の影響より、今回の実験姿勢の影響が大きいものと考える。しかし個別的に見ると、今回4回の実験(3回の牽引)で、腰部症状が消失した者や、1/2牽引力施行数時間後に症状の悪化を招いた者も存在し、牽引に対する反応に個別性が認められた。
【まとめ】下腿筋のこわばりを伴った比較的軽度な腰部症状を有する症例に対し、下腿を水平位に挙上した背臥位は、下腿筋の緊張緩和に効果的であり、同様の姿勢における体重の1/3と1/2の牽引力を用いた間歇牽引も姿勢と同様の効果をもたらす可能性がある。