抄録
多くの水域のpHは中性または弱アルカリ性であるために、水生植物は炭酸イオンを炭素源として利用する。炭素固定の結果、多量の水酸イオンがつくられ、細胞外に放出される。そのために、外液のpHは10近くまで上昇する。シャジクモ類の細胞では、特定の部位から水酸イオンが放出されるためにアルカリバンドが形成される。Lucas(1976)は外液のカリウム濃度を10mMにすると、ほとんどの細胞において炭酸イオンの吸収が著しく阻害されるが、一部の細胞では影響がないことを報告している。本研究ではオオシャジクモのアルカリバンド形成に対するカリウムの影響を調べた。外液に10mM KClを加えると、ほとんどの細胞で細胞外アルカリ化が著しく阻害された。しかし、一部の細胞では影響がなかった。膜電位を測定しながら、アルカリバンド形成を解析した。ほとんどの細胞において、10mM KCl存在下で細胞膜の急激な脱分極が起こった。このような細胞では、アルカリバンド形成が著しく阻害された。しかし、一部の細胞では、細胞膜の静止電位が維持された。このような細胞では通常通りのアルカリバンドが形成された。さらなる解析の結果、アルカリバンド形成には膜電位が必要であると結論した。