理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1024
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理学療法基礎系
スタンスの違いがスクワット動作時の筋活動に及ぼす影響
*宮田 伸吾三秋 泰一
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抄録

【目的】
 スクワット動作(SQ)は、下肢筋群・体幹筋群の筋力を強化できるエクササイズとして、スポーツ場面や理学療法において広く用いられている。より科学的で効果的な筋力増強を追求するためには、SQ時の筋活動状態を知ることは非常に有効と考える。今回、スタンスを変えた3種類のSQを行い、それぞれのスタンスでどのように筋活動状態が変化するのか、どの程度の負荷が筋にかかっているかを積分筋電値(IEMG)を用いて検討した。
【対象と方法】
 対象は本研究の参加に同意したK大学アメリカンフットボール部に所属する7名である。被験者は週3回のウエイトトレーニングを実施しており、SQに習熟している者を選択した。平均年齢は、19.6±1.4歳、平均身長は、174.9±4.9cm、平均体重は、71.8±6.2kg、平均SQ1RMは138.6±21.2kgであった。SQは、肩峰幅をスタンス幅としたミディアムスクワット(MSQ)、肩峰幅の60%をスタンス幅としたナロースクワット(NSQ)、肩峰幅の200%をスタンス幅としたワイドスクワット(WSQ)の3種類で、体重量のバーベルを持たせ行わせた。運動時間は1回に6秒とし、下降に3秒、上昇に3秒かけるものとした。筋電図は右側の大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)、外側広筋(VL)、大殿筋(GM)、大腿二頭筋(BF)、大内転筋(AM)、脊柱起立筋(ES)から双極誘導にて導出した。SQ時の筋電図のデータは、SQを下降期と上昇期に分け、上昇期の初期1秒間を分析対象とした。分析は最大等尺性収縮時の面積積分値(IEMG)に対するSQ時のIEMGの比率(%IEMG)を用いた。SQ時の動作は3次元動作解析装置を用いて検討した。統計学的検定として、スタンスを要因とする1元配置分散分析を行った。
【結果及び考察】
 仮説では、NSQでRF、VM、VLとESの筋活動が高まり、WSQでAMの筋活動が高まると予想した。しかし、スタンスを変えても、筋活動に有意な差は認められなかった。スタンスを広げるにつれて%IEMGはAMでNSQ24.5%、MSQ25.7%、WSQ30.7%と筋活動が上昇する傾向がみられたものの有意な差はなかった。McArdleらによると筋力増強における効果的な筋活動量は最大収縮時の60%~80%とされている。今回、全てのスタンスで60%以上の筋活動を示した筋は、RF、VM、VL、ESであり、少なくとも今回の条件でのSQではこれらの筋に対しての筋力増強効果が期待できると考えられた。逆にGM、BF、AMでは60%未満の筋活動量であったため筋力増強効果は薄いと考えられた。

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© 2005 日本理学療法士協会
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