理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1090
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理学療法基礎系
高齢者の障害歩行路(SWOC)歩行に対する感覚障害の影響
*坂本 由美Joan GuntherKathy NyquistTheresa Kolodziej
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抄録
【はじめに】 日常生活場面で発生する高齢者の転倒は高齢化社会の大きな問題の1つである.バランス制御の障害は転倒因子の1つと見なされ,これまでにも姿勢動揺の測定やFunctional Reachなどのバランス評価法が研究施設や臨床場面で用いられてきた.しかし,バランス制御には幾つかのサブシステムが複雑に関与しており,個々のサブシステムの評価だけではバランス制御の障害を把握することは難しいため,より日常に近い環境での動的で機能的な動作を基にした評価が必要とされる.障害歩行路はそれらを考慮し開発されたバランス評価法であり,今回の研究では,高齢者の障害歩行路上の歩行に対する感覚障害の影響について検討した.
【対象】 米国NY州北部の老人介護施設に居住する32名の高齢者で(平均年齢87.5±7.4歳),椅子からの立ち上がり・着座が可能,補助具の有無に関らずに歩行可能,医学的に安定し,簡単な指示が理解できる者を対象とし,各自のInformed Consentを得た.更に,各自の医療記録の視力障害・聴力障害・内耳神経損傷の記載の有無に従い,対象者を感覚障害を有する群(13名)と対照群(19名)の2群に分けた.
【方法】 Standardized Walking Obstacle Course(以下SWOC)に従い障害歩行路を設定し,その歩行所要時間を2回計測した.SWOCは日常的環境における高齢者の転倒予防に必要な予測的および反応的バランス制御能力を評価するために開発され,幅0.9m・長さ12mの歩行路には,椅子からの立ち上がり,障害物超え・回避,方向転換の課題とともに,視覚的刺激を含む3種類の異なる床面上を歩く課題が含まれている.また,比較検討のためにBerg Balance Scale(以下BBS)によるパフォーマンス評価を行い,t検定を用いて感覚障害の有無によるSWOCとBBSの各測定結果の相違を検討した(有意水準0.05).更に測定後半年間の転倒の有無と感覚障害の有無によるSWOC歩行の傾向を見た.
【結果および考察】 感覚障害を有する群と対照群のBBS平均値は各36.5±10,32.2±10.5で有意差は見られなかったが,SWOC平均値は各49.2±26秒,85.1±54.3秒で有意差が見られた.これによりSWOCは日常生活上の歩行に対する感覚障害の影響を捉えていると考えられる.また今回の結果では,感覚障害を有する高齢者は感覚障害のない者よりも障害歩行路を速く歩くと言う興味深い傾向が見られた.更に,感覚障害を有し,測定後半年間に転倒を経験した群のSWOC平均値は42.3秒で,他の群よりも速く歩く傾向が見られた.このような結果は,パフォーマンスは感覚障害そのものよりも,障害の認識度と関連していることを示唆しているとも考えられ,今後更に検討する必要があると考える.
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© 2005 日本理学療法士協会
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