理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1093
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理学療法基礎系
昇段動作におけるfeed forward運動制御に関する研究
―躓きやすい者の動作のばらつきと高さの見積りについて―
*千鳥 司浩平井 達也今渕 雅之村田 薫克木村 伸也
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キーワード: 段差, 見積り, ばらつき
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抄録
【目的】昇段動作を遂行する際には段差の高さ(段差高)を見積もる過程と内部モデルに基づき実行する過程が存在し,昇段時の躓きはこの2つの側面より捉える必要がある.研究の目的は躓きやすい者の昇段動作を観察し,脚挙上の高さと段差高に対する高さの見積もりとの関係および昇段動作のばらつきを調査することである.
【方法】下肢および視覚に障害を有さない者を対象とし,平均週1回以上の躓きを経験する者(躓き群:7名,平均59.7歳)とそれ以下の者(対照群:7名,平均39.6歳)を年齢,身長に差のない2群に分けた.高さにおける見積もりの正確性を見るために90cmの距離に置いた3種類(2,5,15cm)の異なる段差高を判断し,前方を注視させ視覚的フィードバックを除いた状態でその高さに等しくなるように下肢を挙上させ,段差高との絶対誤差を求めた.次に各段差高へ昇段する動作を行わせ拇趾側よりビデオカメラにて撮影し,拇趾下縁が段差前端上を通過する際の段差との鉛直距離(拇趾-段差距離)とそのばらつきを求めた.その際昇段開始と同時に段差を取り除きフィードバックを与えなかった.いずれの測定も両側上肢はてすりを把持させ安定した環境下で5回ずつ行い,試行毎に段差高を確認させた.昇段動作は通常行っている至適速度で行わせ,その動作中に通常とは異なる違和感が生じる場合は再度試行した.統計処理は繰り返しのある二元配置分散分析,多重比較検定にはFisher's PLSDを用い有意水準は5%とした.
【結果】高さの見積もり:絶対誤差は躓き群では2.0~4.3cm,対照群は0.9~2.0cmであり対照群に比べ躓き群では全ての段差で有意に大きかった.昇段動作:拇趾-段差距離は躓き群では平均3.8~4.6cm,対照群は平均3.4~4.8cmであり群間に差を認めなかった.一方ばらつきを見ると躓き群では1.2~1.5,対照群では0.5~1.0の範囲であり,全ての高さにおいて躓き群のばらつきが有意に大きかった.見積もりと動作の関係:見積りの平均値よりも昇段時の高さが低かったのは躓き群のみ(3人6肢)であり,いずれも昇段時に段差との接触を認めた.
【考察】躓き群における昇段時の平均的な脚挙上の高さは対照群と相違ないが,昇段動作の一貫性が低下していた.また見積りの誤差が大きいだけではなく脚挙上が見積もりの高さよりも低いことがあり,見積もりを有効に利用していないことが判明した.被験者より全施行において通常の動作を再現良く行えたとの内省を得ているにもかかわらず,躓き群では動作にばらつきが大きいということは運動命令に伴う随伴発射と実際に行っていた運動の情報との不一致を認識していないことが伺えた.躓きには多くの因子が関与しているが昇段動作の一貫性の低下は動作の不安定性を生じさせ,見積りの障害と共に躓きを生じさせる要因であると考えた.
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© 2005 日本理学療法士協会
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