抄録
【はじめに】我々は,前回の本学会において足関節底屈筋群の筋力検査法について運動学的解析を行い,正常の判定基準である反復踵上げ動作中の腓腹筋に疲労が起こること,さらに前後方向のCOP(圧中心)移動と床反力の結果から底屈筋力が分散することを明らかにし,その妥当性や問題点について報告した.そこで,今回我々は,反復踵上げ動作による判定に代わり,徒手抵抗による判定を考案し,その妥当性について検討したので報告する.
【方法】対象は健康若年男子10名(平均年齢22±2歳,平均身長171±6cm,平均体重59±6kg ).全員,過去に下肢の機能傷害を持たないものであった.被検者に書面をもって十分な説明を行い,同意を得た.本研究では,特に重力と徒手による抵抗を明確にして調査した.踵上げ動作に代わる方法として,被検者に完全底屈位での踵上げ肢位を保持させ,検査者は被検者の正面の位置に立った.抵抗を加える手は両骨盤部(骨盤稜)にあてがうようにした.抵抗は下方に向かう方向(床に向かって)に,足関節が底屈するように加えた(改MMT5).このとき,体幹の動揺や股及び膝関節が屈曲しないようにした.底屈筋群測定の腹臥位での段階2プラス(以下MMT2プラス)と踵上げ肢位保持(踵上げ保持)との比較を行った.さらに,他の筋の各段階との比較のため,膝関節伸筋群のMMT5及びMMT3についても調査した.
足関節底屈筋(腓腹筋)と膝関節伸展筋(大腿直筋)の筋活動をマイオシステム1200(NORAXON社製)を用い,サンプリングタイム1kHzで記録した.さらに,BiodexSystem3を用いてMVC(最大随意収縮)を引き出し,各試行の%MVCを算出し,比較した.それぞれ3試行の平均±sdを求め,統計解析は有意水準0.05以下とした.
【結果】腓腹筋の%MVCは,改MMT5(113.5±21.0 %)で踵上げ保持(75.2±16.1 %)とMMT2プラス(60.3±16.7 %)より有意に大きかった(P<0.05).しかし,踵上げ保持とMMT2プラスの間に有意な差はみられなかった.大腿直筋のMMT5の%MVC (71.1±25.7 %)はMMT3(14.0±14.3 %)より有意に大きかった(P<0.05).改MMT5での腓腹筋の%MVCは大腿直筋のMMT5のものより有意に大きかった(P<0.05).
【考察とまとめ】踵上げ動作の反復回数による判定方法は,腓腹筋など底屈筋群に筋肉疲労を引き起こすことが問題であった.そこで,今回我々は足関節底屈筋の筋力評価として徒手抵抗による方法を試行し,最も大きな筋活動を得ることができ,他の段階と区別できることを確認した.今後は,徒手抵抗についてはさらに検討を加え,検者内での比較も行ってゆきたい.