抄録
【はじめに】
我々は、変形性膝関節症(以下OA)と脳血管障害を健側、非麻痺側の膝、足関節を抑制した状態で連続30m歩行させた後のOA側膝関節位置覚変化の検討を行ってきた。その中で変形性膝関節症にのみ改善傾向を示した。そこで、今回はOAの位置覚変化の追跡研究を目的とし、検討を行い若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象】
対象は、本研究の内容を理解し同意を得た、OA患者33例(平均年齢77.1±7.5歳 男性4例 女性29例)とし、無作為に施行群17例(以下H群)、対照群(以下C群)16例にわけ実施した。また、一側下肢を抑制した状態で介助歩行不能なもの、理解力が低下したものと異常感覚、脳血管障害、骨折既往があるものは除外した。
【方法】
OA側を検査側(両側OAの場合は、膝関節屈曲の関節可動域制限が大きい側)とした。位置覚検査肢位は椅坐位とし、両足底は床面より離床させた。その肢位より、視覚を遮断し膝関節を他動的に30°伸展させ10秒間保持し位置覚を記憶させ、その後自動的に膝関節30°伸展させた。角度測定は2度行い、電子式関節角度計DIANGLE-T(光ベルコム)を用いた。測定後にH群は短下肢装具と膝伸展保持装具を非検査側に装着し、椅坐位からの立ち上がり動作から連続30mの歩行を実施し椅坐位まで行った。C群は抑制しない状態で行った。その際、杖や補装具の使用は禁止した。
統計解析は、Fisherの直接確立計算法、Mann-Whitney検定、Wilcoxon検定を用い統計学有意水準を危険率5%未満とした。
【結果】
全対象者の実施前位置覚誤差は8.1±7.2°であった。抑制前後誤差は、H群10.5±8.5°、5.7±4.7、C群5.5±4.5°、5.4±4.4°であり、H群とC群間に有意差は認められなかった。H群の抑制前後の誤差において傾向性を認めた。H群、C群の抑制前位置覚誤差が正常基準範囲(5°)以上のものがそれぞれ13名、6名であり抑制後は正常基準範囲内となったものが9名、1名と有意差(p<0.05)を認めた。
【考察】
OAによるメカノレセプターの破壊や変性は固有感覚低下を引き起こすとされ、廃用性萎縮を来たしている筋の筋紡錘や腱紡錘の活動量は減少することが示唆されている。今回の結果からもKaplan FSらが示す正常基準範囲に比べ対象者の誤差が大きいことが考えられた。
H群、C群の抑制前位置覚誤差が正常基準範囲以上のものがそれぞれ13名、6名であり抑制後は正常基準範囲内となったものが9名、1名と有意差を認めた。また、H群にのみ誤差が改善傾向を示した。これは、OA側を強制的に使用させることにより、関節に圧迫がかかり関節受容器への刺激が増加したことと、努力性の運動により関節の位置変化を正確に知覚させるため筋紡錘の活動量が増加し感覚神経感度が上昇したためであると考えた。