抄録
【はじめに】
近年、体重免荷装置を用いた歩行練習の有効性が報告され、脊髄下肢麻痺患者についてもその効果が報告されている。この歩行練習は、上方からハーネスを用いて吊り上げることで、下肢にかかる荷重量を減少させて歩行する方法である。今回、脊髄性下肢麻痺患者を対象に、体重免荷装置を用いた歩行練習を行い、若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】
対象は、2004年5月~11月の間に体重免荷装置による歩行練習を行った脊髄性下肢麻痺患者5例とした。性別は全例男性、平均年齢は50.0±22.0歳であった。症例の特徴として、中心性頸髄損傷の2例では上肢・体幹に優位な麻痺を認め、加えて下肢痙性を認めていた。胸椎後縦靱帯・黄色靱帯骨化症と胸髄硬膜外血腫の2例では、下肢に優位な麻痺と痙性を認め、頸髄症の1例では上肢の麻痺と体幹・下肢の麻痺と廃用性筋力低下を認めていた。体重免荷装置による歩行練習にはBiodex社製Unweighting System(BDX-UWS)およびTreadmill(BDX-T500)を使用した。なお、免荷量と歩行速度、歩行距離は症例の歩行能力の向上に合わせて変化させて行った。
【結果】
上肢、体幹機能の低下と下肢痙性を認めた2例の歩行能力は、下肢筋力を代償できるほどの上肢、体幹機能が十分ではなく、それぞれ歩行器歩行で60m程度、ピックアップウォーカー歩行で30m程度が限度であったが、練習での歩行距離は200m、300m可能となり、最終時は歩行器歩行が120m程度、T字杖歩行が院内自立レベルに改善した。下肢の麻痺と痙性を認めた2例については、それぞれ平行棒内歩行2往復程度、歩行器歩行で60m程度が限度であったが、練習での歩行距離は100m、400m可能となり、最終時はピックアップウォーカー歩行で60m程度、松葉杖歩行が院内自立レベルに改善した。下肢の麻痺と廃用性筋力低下を認めた1例については、平行棒内歩行2往復程度が限度であったが、練習での歩行距離は140m可能となり、最終時は歩行器歩行が60m程度に改善した。
【考察とまとめ】
体重免荷装置による歩行練習の作用としては、下肢負荷量の軽減、体幹の安定性確保、転倒防止機能などが考えられている。脊髄性下肢麻痺患者の歩行能力の回復には、高負荷運動による下肢、体幹の筋力の強化も重要な要素の一つと考えられるが、中枢神経系の可塑性を考慮し神経系への促通を図るためには、下肢筋活動が高頻度反復に可能となる歩行を通した学習がより重要と考えられる。今回対象とした上肢、体幹の支持性低下や下肢痙性などにより歩行練習が十分に行えない症例に対して体重免荷装置を用いることは、体幹をサポートし下肢荷重量を減少させることで、高頻度反復の歩行練習をより早期から、より多く行うことが可能となると考えられた。