理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 251
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神経系理学療法
長期支援を必要とする脳外傷者に対する理学療法実施の一例
*波多野 直岡本 隆嗣
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キーワード: 脳外傷, 長期支援,
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抄録
【はじめに】当院の外傷性脳損傷者に対する支援として、入院中は脳外傷クリニカルパスを中心とし、退院後も外来診療と社会資源を併用した包括的アプローチを行っている。我々はこれを「ライフステージに沿った支援」と定義し、支援を長期的に捉える体系作りを行っている。一例として、当事者および家族の要望に応じ年1回を上限とした再入院による支援も実施している。しかしながら現行の体系だけでは対応しきれない様々な課題がある。本報告では初回入院時の対応をあげ、退院時に身体能力向上の可能性とその練習を必要とする患者への支援について症例を通して考察する。
【症例】55才 男性。診断名:外傷性脳損傷・左下腿骨折(平成16年2月受傷)。障害名:右片麻痺・失語・見当識障害。初回入院期間:平成16年5月18日から8月18日。外来治療期間:平成16年8月31日から10月26日(2週毎1回・計5回)。
【経過】入院時の麻痺は弛緩性であり、車いすによる全介助であった。治療目標を端坐位姿勢の改善・荷重および麻痺部位の促通とし、環境調整・介助歩行等を実施した。歩行では動作の非対称性や、過剰努力による偏った運動学習を回避するために、装具・平行棒等の器具を出来るだけ使わないようにした。退院時は坐位姿勢が改善し、麻痺側の随意活動がみられた。外来治療では、経時的に見当識や随意活動のさらなる改善がみられた。しかし、両下肢の浮腫が著明になり、運動量も入院時より低下していた。この経過をふまえ平成16年11月より、総合的なリハビリテーションと動作面での改善を目的とした再入院を実施する予定が組まれた。
【考察】本症例に対する支援で重要な点は、初回入院中に確認された身体能力向上である。一般的に運動感覚の賦活や自発性の向上のために、立位・歩行は治療上意義がある。反面、配慮が不十分であると偏った運動学習を作りかねない。これを回避するため、本症例では裸足及び上肢支持のない環境を多く用いた。このため理学療法士側には単なる支持ではなく、自発動作の促し・安心感の提供・成功感を実感できる場面等を含めた総合的な技術が求められた。さらに無自覚的な感覚への配慮より、言語による修正を少なくすることも重要であった。端坐位の改善と随意活動が確認されたのは、治療開始より1月程経過した時点で、これらは初歩的かつ実用レベルではない範囲であった。この動作能力レベルは退院の頃まで続いたため、その後も運動学習を継続する必要であった。しかしながら見当識低下等の問題より、入院期間の延長は利点が少なかった。このため治療的支援を外来診療とし、生活の場を病院から自宅環境に変更した。結果身体能力の改善と次の課題が具体化し、再入院の予定が計画された。この経過は、ライフステージに沿った治療的支援の一手段として有用であると考えられた。発表では再入院時の所見を含め報告する。
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© 2005 日本理学療法士協会
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