抄録
新潟市民病院小児科の遺伝外来ではリハビリテーション技術科と連携してダウン症児の医学的管理や発育・発達に関する指導を行っている。ダウン症の確定診断や合併症が判明した後、理学療法士により運動・知的発達の向上を目的に発達的アプローチが開始される。理学療法は独立歩行の獲得を目標に実施し、発達とともに発語や遊びの展開を目標に言語療法、学習準備活動を目標に作業療法を実施し、就園・就学を促している。
【目的】
当院で行われている発達的アプローチを実施したダウン症児の運動発達を検討する。
【方法】
対象は、新潟市民病院通院中、および新潟県ダウン症児をもつ家族の会「ドレミくらぶ」の会員で本研究に同意が得られた0歳から6歳までのダウン症児30名である。
方法は、質問調査データ、および医学記録を用い、生育暦、運動発達の経過、合併症の種類と有無、遠城寺式乳幼児分析的発達検査表の情報を得た。頸定・座位・腹ばい・つかまり立ち・一人歩きの獲得月齢を記録し全体的な運動発達経過を明らかにするとともに、いざり移動や合併症の有無による運動発達の違いを群間比較し検討した。また、遠城寺式乳幼児分析的発達検査結果から対象児の運動・社会性・言語領域の発達的特性を検討した。
【結果】
1.各運動獲得月齢は、頸定6.0±2.1ヶ月・座位10.4±3.1ヶ月・腹ばい12.5±4.2ヶ月・つかまり立ち16.8±5.9ヶ月・一人歩き23.1±4.6ヶ月であった。2.発達過程でいざり移動をした群としなかった群、手術適応あるいは重複した心臓疾患の有群と無し群で発達指標を比較した結果有意差はなかった。3.遠城寺式乳幼児分析的発達検査結果では「移動運動」、「手の運動」、「基本的習慣」、「言語理解」は類似した発達経過であっが、「対人関係」はそれらに比して良好な発達を示し、「発語」は全領域の中で最も発達が遅かった。
【考察とまとめ】
乳幼児期のダウン症児は全身の低筋緊張や関節可動域の拡大が特徴的である。それに伴い腹臥位や姿勢の変換を好まない、いざりや背這い移動を行うなどの傾向を示し、運動発達が健常児に比して遅れる。ダウン症児の一人歩き獲得月齢は先行研究によると24.4ケ月(Melyn),25.8ケ月(池田)との報告がある。本研究では23.1月であり当院で行われている発達的アプローチは運動発達を促進していると解釈できる。仮説はいざり移動をしたり心疾患の合併症を有していると運動発達が遅れると立てたがその説は立証されなかった。いざり移動とともに腹臥位からの腹ばい・高這いを体験していること、手術適応の心疾患でも術後ほぼ完治し運動発達に影響を受けないこと、が判明した。良好な「対人関係」、「発語」の顕著な遅れはダウン症児の一般的な特徴を反映しているように思われた。