理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 287
会議情報

神経系理学療法
左半側空間無視患者における空間表象の言語記述分析(第2報)
―病態変化に着目して―
*片岡 保憲森岡 周沖田 学池田 耕治宮本 省三
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】昨年の本学会において,半側空間無視(以下USN)患者の空間表象に対し言語記述分析を行い,左後方の表象が顕著に障害されている可能性が示唆されたことを報告した.今回は左USN患者に対し,机上検査および空間表象の両側面から病態変化を追跡し,分析したので報告する.
【症例】平成16年6月3日に右中大脳動脈閉塞にて発症し,左片麻痺及び左USNを呈した75歳女性である.Br.stageは上肢4,下肢5であり,感覚は表在深部ともに鈍麻であった.線分二等分試験では二等分線が右側へ1.5cm偏倚し,線分抹消試験では40本中12本の見落としがみられた.星印抹消試験では56個中28個の見落としがみられ,花の絵の模写課題では左側の花が模写できない状態であった.
【方法】インタビューによる空間表象の言語記述を実施した.聴取内容は,まず空間の主観的表象として,1)右側の世界,2)左側の世界,3)右後方の世界,4)左後方の世界をどう感じているかを聴取した.次に,空間の客観的表象として,対象の居住地で最も有名な交差点にある「はりまや橋」上に北の方角に向かって立っていることを閉眼にて表象させ,5)右側にどのような建物や店があるか,6)左側にどのような建物や店があるか,7)右後方にどのような建物や店があるか,8)左後方にどのような建物や店があるかを聴取した.最後に,空間表象上の自己の身体の方向を180度回転させ,「はりまや橋」上に南の方角に向かって立っていることを表象させ,5)~8)のインタビューを実施した.聴取時期は,発症より2週間経過した平成16年6月17日とその1ヵ月後の7月17日,さらに1ヵ月後の8月18日の計3回とした.なお,インタビューにはOLYMPUS Voice-Trek W-1を用い,記述内容を記録し,分析した.
【結果と考察】空間の主観的表象においては,視覚的に入力された物体環境をそのまま記述する傾向にあり,特記できる左右差はみられなかった.空間の客観的表象においては,6月17日当初には,一度右前方で表象可能であった建物や店が自己の身体を回転させた後,左後方では表象できない傾向や,左後方で表象できなかった建物や店が自己の身体を回転させた後,右前方で表象できるといった傾向が著明に認められた.7月17日の時点においては,左後方の表象も部分的に可能になるといったように,その傾向に改善がみられはじめ,机上検査においてもUSN症状の改善傾向を認めた.8月18日には机上検査におけるUSNの症状はほぼ消失し,客観的表象にも改善がみられたが,一度右前方で表象可能であった建物や店が自己の身体を回転させた後,左後方では表象が乏しい傾向は残存した.経過から,USN所見の改善と共に客観的表象にも改善は認めるが,心的回転を含めた左後方の表象の改善は必ずしも机上検査の改善に一致しないことが示唆された.
著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top