抄録
【目的】
本研究は当院回復期病棟に入院中の脳血管障害患者において,転倒リスクの高い患者のもつ特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は2003年1月1日から12月31日までの1年間に当院回復期病棟に入院し退院した脳血管障害患者226名とした.当院での転倒の定義(足底以外の身体部位が床に接地した場合)に則り,入院中に転倒した者を転倒群(n=108),転倒しなかった者を非転倒群(n=118)とした.基本情報として入院時記録と転倒報告書から年齢,性別,病型(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血),病巣側,脳血管障害既往の有無,麻痺の有無,感覚障害の有無,下肢ブルンストロームステージ(以下BRS),functional independence measure(以下FIM),Mini-Mental State(以下MMS)を得て2群間比較を行った.年齢はt検定,BRS・FIM・MMSはMann-Whitney検定,その他の変数にはカイ二乗検定を用いて比較した.次に転倒に対する各変数の寄与の程度を明らかにするために,転倒の有無を従属変数とし,2群比較で有意差のあった変数を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った.回帰分析では,年齢は64歳以下,74歳以下,75歳以上で3群に分け,FIMは運動項目合計を辻の報告1)を元に4群に分割した.MMSは24点以上と未満に分けて使用した.統計ソフトはStatView ver.5を使用し,有意水準はp<0.05とした.
【結果】
2群間比較で有意差を認めたのは,年齢(p=0.0199),クモ膜下出血の有無(p=0.0404),MMS(p=0.0001)感覚障害の有無,BRS,FIM(いずれもp<0.0001)であった.年齢が高く,感覚障害があり,クモ膜下出血のものほどそうでないものに比べ転倒しやすかった.回帰分析の結果,独立変数としてFIMが採択され(p<0.0001),オッズ比は0.231,95%信頼区間は0.131から0.407であった.FIMの低いほど転倒しやすかった.
【考察】
2群比較で有意差のあった項目は,回復期脳血管障害患者の中でも転倒しやすい患者のもつ特徴と考えられ,転倒を予測する上で注意すべき項目と思われた.半側空間失認や注意障害なども転倒のリスクを高めると言われているが,今回はそれらを反映すると思われる病巣側に有意差がなく,今後評価方法を含め検討が必要と思われた.またADL能力が低いと転倒しやすいことも指摘されているが,今回採用した群分けにおいて得点が一段階低くなるに従い,転倒リスクが約4倍高まることが明らかとなり,当院ではADL能力に応じた転倒予防対策をさらに工夫する必要がある.
参考文献
1)辻哲也,園田茂・他:入院・退院時における脳血管障害患者のADL構造の分析.リハ医学33(5):301-309,1996.