理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 628
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神経系理学療法
半側空間無視患者における視覚刺激-反応時間の左右差の検討
―二重課題を用いた方向性注意の評価を試みて―
*北里 堅二入江 泰子金子 真一田尻 隆幸中元 愛子保田 佳史
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抄録
【はじめに】半側空間無視症状の見られる片麻痺患者は、果たして無視方向の空間に対して注意が低下しているのであろうか。今回、注意以外の要素の影響を極力取り除くため、二重課題を用いた場合と用いない場合の視覚刺激に対する反応時間を左右各方向で測定・比較して、若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】今回の研究の主旨を説明し同意を得た、脳卒中左片麻痺患者11名(男性7名、女性4名、平均年齢68.4±6.8歳)と脳卒中の既往のない対照群11名(男性2名、女性9名、平均年齢68.2±14.5歳)を被検者とした。左片麻痺群は線分抹消試験、線分二等分試験、絵画模写試験により左半側空間無視の有無を検査し、半側空間無視症状のある7名と症状のない4名の2群に分けられた。
被検者は机の前にまっすぐ座り、正面に対し30度の角度に置かれたモニターを見つめ、モニターが光ったら出来るだけすばやく手元のボタンを右手で押すように指示された。このとき、頚部の動きや視線には制限を設けず、自由に動かせるものとした。光刺激にはキセノンによる赤色瞬間発光を用い、発光からボタンを押すまでの時間を竹井機器工業の全身反応測定器2型により測定した。被検者は数回の練習後左右各5回反応時間を測定され、その後、検者が読み上げる一桁の足し算に答えながら同様の測定を受けた。
各自の各条件下での平均値を左右別に算出し(半側空間無視群のうち2名は計算ありの条件ではボタンを押せなかったことが数回あり、平均値はボタンを押した回のみで算出した)、計算条件ありの場合の平均値を計算条件なしの平均値で除した数値を左右それぞれの遅延率とした。左片麻痺群及び半側空間無視群の遅延率の左右差と対照群のそれに違いがあるかをウイルコクソン符号付順位和検定により分析した。
【結果】遅延率の平均値は対照群で右4.08±2.06、左3.64±1.30、左片麻痺群全体で右3.48±1.44、左3.00±1.15、半側空間無視群のみで右3.34±1.76、左2.75±1.39であった。対照群、左片麻痺群、半側空間無視群それぞれで左右の遅延率間に有意な差は見られなかった。半側空間無視群7名では、右の遅延率が左の遅延率より大きかったものが4名、左の遅延率が大きかったものが3名であった。線分抹消試験、線分二等分試験、絵画模写試験すべてに症状が見られた症例(1例のみ)では右遅延率3.40左遅延率2.54と左の遅延率のほうが小さい結果を示していた。
【まとめ】視覚刺激を与えて反応するまでの時間を計測する際、一桁の加算を二重課題として与え、半側空間無視患者の方向性注意の差を評価することを試みた。今回の結果では、半側空間無視を有する患者の無視側空間に対する注意についての統一的な傾向は見出せなかった。
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© 2005 日本理学療法士協会
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