抄録
【目的】筋強直性ジストロフィー(myotonic dystrophy,MyD)における障害の進展過程を明らかにしていく一環として、今回、上肢における機能障害の広がりと程度、左右差の有無について検討することを目的とした。
【方法】研究協力の同意が得られたMyD患者21名(男14名、女7名、平均年齢51.0±9.3歳)。手のmyotoniaは全例で観察された。運動機能障害度(鈴鹿式移動ステージ)は、1;5名、2;4名、4;4名、6;5名、7;5名だった。上肢機能検査として左右の肩・肘・前腕・手関節・手指のROM-T(日本整形外科学会、リハ医学会)とMMT(肩甲骨挙上を含む)を実施した。なお、MMTの判定尺度にはBrookらによるmodified Medical Research Council Scaleを用い、gradeはStrenrth Grading Scale(0~10point、0;No movement、10;Normal strength、Florenceら、1984)で数量化した。また、握力、ピンチ力(母指と示指による横つまみと指腹つまみ)を手指筋力測定器(SAKAI製)で測定した。握力とピンチ力は3回づつ測定し、最大値を採用した。左右差の分析には1標本t検定を用い、有意水準は1%とした。
【結果】1)左右差;左右の肩~手関節の他動ROM、筋力(MMT)、握力、ピンチ力に統計学的な有意差はみられなかった。よって、以下には右上肢の分析結果を示す。2)ROM;標準値に対する他動ROM平均値の割合は肩屈曲・伸展・外転・外旋・内旋、手関節掌屈・尺屈・橈屈で70~80%、肘・前腕・手関節背屈で93~100%だった。手指では母指IPと他4指のDIP屈曲がそれぞれ標準値の83%、67%であった。また、手指の自動ROM平均値は全指でMP伸展の値がマイナスであり、標準値に対する自動ROMの割合は母指IP屈曲で43%、 他4指のPIPとDIP屈曲でそれぞれ78%、22%だった。3)筋力;筋力(point)の平均値は肩甲骨挙上が7.0で最も高く、次いで前腕回内5.9、肘屈曲5.8の順であり、その他の部位のpointは5.4~4.8だった。握力と横つまみ・指腹つまみの筋力値はそれぞれ3.9±1.9 kgw、1.3±0.6kgw、0.9±0.7kgwであり、各2変数間での相関係数は有意ではなかった。
【考察】対象者の上肢のROMと筋力は対称性に障害されていた。ROMでは肩と手関節(背屈を除く)の制限が肘・前腕よりも強かった。筋力低下はびまん性に進行しており、その中で肩甲骨挙上の筋力が比較的温存されていた。MyDでは手の外来筋が早期に侵されて虫様筋と骨間筋が優位な手の形状を呈する者が多く、今回の手指の他動及び自動ROM、握力・ピンチ力の検査結果はこのことを裏付けている。なお、今後は症例を増やしながら縦断的な検討を続けると同時に、上肢機能とADL、手指のmyotoniaとの関連についても検討する必要がある。
【まとめ】MyDでは上肢のROMと筋力が対称性に障害されており、筋力はびまん性に低下していた。上肢機能とADL、myotoniaの関連については今後の課題である。