抄録
【目的】当院は横浜の某Jリーグチームの指定病院であるため、患者数におけるサッカー選手の割合が多い。サッカーはactivity levelの高い競技であり、膝関節外傷の発生頻度が高く、安全に競技復帰するためには競技特性の深い理解が不可欠である。今回我々は、サッカー選手の競技復帰を考慮した膝前十字靭帯(ACL)再建術後のリハビリテーション(以下リハ)を紹介する。
【対象及び方法】1999年6月~2004年3月までに当院にてACL再建術と術後リハを行ったサッカー選手27例のうち、再鏡視しえた23例23膝を対象とした。これらの症例に対し、(1)競技復帰までの期間(2)術前後の競技レベル(Tegner Activity Score)(3)術後1年時(術後経過観察期間が1年未満の症例に対しては復帰時)の膝前方制動性(KT-2000患健側差)(4)移植腱の状態をそれぞれ評価した。
【術後リハ】全荷重開始は4週とした。3ヶ月間(メディカルリハ期)は装具を装着し、DYJOCボード上にて非術側でのボールキック(インサイドキック)を行っている。4~6ヶ月(アスレチックリハへの移行期)はフットワークやそれに加えパス、ドリブル動作なども応用して行っている。また、これらのトレーニング中knee-in toe-outの肢位にならないよう、指導している。6ヶ月以降(アスレチックリハ期)から術側でのボールキックを許可し、リハプログラムを加速化させている。キック動作は、比較的安全なインサイドキックから開始し、インステップキックへと段階的に許可している。また、この時期にはルーズボールに対してステップワークからキックを組み合わせる動作なども加え、徐々に実戦に即したトレーニングへと移行している。なお6ヶ月以降、定期的(1回/月)に等速性筋力測定器(Ariel)にて膝屈伸筋の筋力を評価し、個々に合わせてリハプログラムを調節している。当院の競技復帰許可の目安は(1)再建術後6ヶ月以上経過(2) 膝屈伸筋力の患/健比が85%以上 (3) X線評価にて骨硬化像が明瞭(4) 膝脱臼感、不安定感がない(5)疼痛が無くサッカー動作が行える、以上5項目である。なお、これらの結果を主治医が総合的に評価し、理学療法士やトレーナーとの協議の上、復帰の許可をしている。
【結果及び考察】復帰までの期間は9.3±1.5ヶ月、Tegner Activity Scoreは術前8.4±1.2に対し術後8.2±1.3であり、全例競技に復帰した。KT-2000健患差は0.4±1.2mmであった。また、再鏡視時の移植腱の状態は概ね良好であり、断裂やゆるみを残した症例はなかった。サッカーはボールを足で扱う競技であるため、通常のフットワークの他にドリブルやキック動作を交えたボールタッチトレーニングを安全な範囲で早期から行う必要がある。再建膝に対しサッカーの競技特性に合った感覚系(proprioception)の回復を即すことによって、安全かつ早期にスムーズな競技復帰が可能であった。