理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 136
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骨・関節系理学療法
腰部疾患における短期術後成績
―術前と術後6ヶ月における比較から―
*中井 英人荒本 久美子澄川 智子川上 紀明後藤 学辻 太一小原 徹哉今釜 史郎
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キーワード: 術後腰部疾患, 柔軟性, 筋力
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抄録
【はじめに】我々は第39回日本理学療法学術大会において手術に至った腰部疾患に対し、腰部機能評価として日本整形外科学会腰痛疾患治療判定規準(以下JOA score)と患者満足度としてMOS SF-36 Item Health Survey(以下SF-36)の検討を行い、疼痛、ADL、QOL、役割遂行が手術決定に大きく関与していたと報告した.今回我々は腰部術後短期経過における腰部機能評価、患者満足度、疼痛、運動機能を術前と比較し、若干の知見を得たので報告する.
【対象】対象は2002年5月から2004年4月に当院で手術を施行し術後リハビリを施行した腰部疾患患者305例の内、術後6ヶ月の定期検診を受けた121例(腰椎椎間板ヘルニア35例、腰部脊柱管狭窄症33例、腰椎すべり症30例、変性側彎症9例、脊椎・脊髄腫瘍9例、腰椎分離症3例、腰椎破裂骨折1例、腰椎後彎症1例)で、男性75名女性46名、平均年齢57.3歳であった.
【方法】術後リハビリはベッドサイドより開始し、立位歩行、ADL指導、下肢ストレッチ、姿勢矯正、体幹筋強化の順に進行する.評価測定は、術前および術後6ヶ月定期検診受診時に行った.検討項目は、腰部機能評価としてJOA score、患者満足度としてSF-36、疼痛スケールとしてVAS、運動機能評価として柔軟性(FFD、両側股関節屈曲、SLR、膝伸展位での足関節背屈角度)、下肢体幹筋力、ADL指標として10m最大歩行速度を求めた.そして筋力はMMT3以下および左右差がみられるものを低下ありとし、10m最大歩行は10秒未満をADL自立ありとし有無の2群に分類した.またJOA scoreは当院整形外科脊椎脊髄センター外来受診時に採取された点数を参照した.統計処理にはJOA score、SF-36、VAS、柔軟性に対し多重比較検定(Tukey-Kramer法)を用い、筋力、ADL指標に対しχ2乗検定を用い、危険率5%未満を有意差ありとした.
【結果】術後においてJOAは12.9点、SF-36は各項目平均20.9点、VASは5.89、ADLは11.2%と有意に改善した.柔軟性ではSLRは3.9度有意に改善したが、股関節屈曲は1.7度有意に低下していた.筋力では股関節外転が24%、足関節底屈が16.6%と有意に改善したが、腹筋群は7.5%、背筋群は1.4%有意に低下していた. 
【考察】当院での術後腰部疾患におけるアウトカムは歩行安定、下肢柔軟性獲得、ストレッチ学習の3点である。今回の結果より、術後6ヶ月時点では腰部機能、疼痛は改善され、どの項目においても患者満足度は上昇していた.また活動量の上昇により抗重力筋筋力が改善されており、退院後の歩行量も上昇したと思われた.SLRは改善しており、ホームエクササイズが出来ていたのではないかと思われた.しかし術後早期よりコルセット装着による影響から股関節屈曲角度は低下しており、結果としてFFDにも影響を与えていた.同様な理由で体幹筋力も低下していた.
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© 2005 日本理学療法士協会
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