理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 142
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骨・関節系理学療法
腰部スタビライゼーションエクササイズへのスリングの応用
*古川 公宣下野 俊哉
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抄録
【はじめに】腰部スタビライゼーションエクササイズは,腰痛患者の治療法として最近注目されている.この治療法の概念は,脊柱および腹部の深層筋を同時収縮させることで,脊柱の中立位を維持し椎間板内圧の均等化を得ることを目的としている.しかし,運動課題の中には遂行することが容易ではなく,効果的に同時収縮を得ることができない者も多い.そこで今回我々は,一般的なスタビライゼーションエクササイズにスリングを導入することで,腰部および腹部深層筋のより高い同時収縮が得られるのではないかと考えて実験を行った結果,若干の知見を得たので考察を加えて報告する.
【対象と方法】腰痛症の既往のない健常男性9名(平均年齢:22.0±4.5歳,平均身長:171.4±4.7cm,平均体重:67.0±6.5kg)を対象とし,以下に挙げる課題遂行中の内外腹斜筋および腰部最長筋と多裂筋の筋活動電位を表面筋電計Noraxon社製TeleMyo2400Tを用いて導出した.腰部スタビライゼーションエクササイズは腹部の引き込み運動を行っている状態で,課題1:背臥位,腰部に前弯強調のための枕を挿入,下肢伸展位で足関節部を固定し,腰部を枕に押しつけながら両側下肢挙上を行うものとこれを腰部をスリングで懸垂して行うもの,課題2:腹臥位,足関節部で固定したまま下肢伸展位で股関節伸展を行うものとこれを腹部をスリングにて懸垂した状態で行うものとの比較,課題3:背臥位,下肢伸展位で高さ20cmの台上に足関節部を置き,そのまま殿部挙上を行うものとこれを足関節部でスリングにより懸垂して行うもの,課題4:四つ這い位,一側下肢を伸展位で股関節伸展を行うものとこれを両上肢をスリングにて支持して行うもので比較を行った.また,腰痛症への転用をふまえ,最大随意収縮時の値を標準化値として用いるのではなく,腹部筋については背臥位での両下肢伸展挙上,腰部筋については腹臥位での両下肢伸展位での股関節伸展(床から10cm)時の値を標準化値として用いることとした.各課題および標準化課題は5秒間保持し,その中の連続して安定した2秒間の平均振幅を算出,標準化値で除すことで各課題でのスリングの有無における増加率を比較検討した.
【結果と考察】各課題においてスリングの有無における統計学的有意差は認められなかったが,課題1では内腹斜筋および多裂筋の増加率が高値を示した.課題2では内腹斜筋が高値を示し,課題3では全ての筋が高値を示すものの最長筋の増加率も高かった.また課題4では内腹斜筋の増加率が最も高かった.これらの結果は,スリングで支持することによる遊動性(不安定性)により体幹筋の活動が高まるのではないかと考えられた.
【まとめ】スリングの併用により腰部スタビライゼーションエクササイズの効果を高めることができる可能性が示唆されたが,より効果的な課題に対する検討の必要性も示唆された.
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© 2005 日本理学療法士協会
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