2009 年 21 巻 4 号 p. 69-80
要旨:北海道漁業の端緒となった道南地域の漁業集落の史的遷移構造とその形成要因を書誌学的手法により明らかにした.地理学的観点や歴史学の時代区分を援用し設定した時代・地域の産業史を精査した.道南の漁業集落は,本州側需要が引き起こした水産物交易による海から拓けた地域に存立してきたことが明らかとなった.漁場や航海路を開拓・確保していく際には,津軽海峡の海流などの地理的環境・自然環境の影響が大きく関与することがわかった.漁具や船舶の技術的発達に伴い,経済行為を最適化できるように域内の集落形成がされたと考えられた.特に,集落形成に関わった要因は経済学でいう「土地」・「労働」・「資本」の生産三要素に集約することができ,現在の漁業集落の構造と変わりのないことも明らかとなった.地勢的特徴に基づく産業・経済の発展と時代的に異なる社会構造の変化は,水産・海洋に関する要素連関の動的応答として顕れることが示された.