抄録
【はじめに】
平成15年4月から平成16年11月までに、当院で前十字靭帯(ACL)再建術を施行した症例は18例であり、受傷機転は接触型損傷2例、非接触型損傷は16例であった。特徴的だったのは非接触型損傷のうち15例が左膝の損傷であった。また従来の報告どおり女性の受傷が多かった。そこで今回、健常女性を対象に、なぜ左膝の損傷が多いのかを検討するために、左右下肢機能について調査を行った。
【対象と方法】
対象は同意を得られた健常女性17名(平均年齢21.2±3.3歳、全て右利き)とし、以下の2つの調査を行った。(1)膝外反位(knee-in)の評価:膝伸展位の片脚立位と、片脚立位から支持脚の膝約30°屈曲位を前額面からデジタルカメラで撮影した。これらを左右の下肢で行い画像をパソコンに取り込んだ。片脚立位での上前腸骨棘をA、母趾中心点をB、膝蓋骨中心点をCとし、∠ACBを計測した。同様に膝約30°屈曲位での上前腸骨棘をA’、母趾中心点をB’、膝蓋骨中心点をC’とし∠A’C’B’を計測した。角度の計測はNIH imageを用いた。∠A’C’B’が∠ACBより5°以上減少した場合をknee-in陽性とし、knee-in陽性、陰性の数の左右比較を行った。(2)ジャンプ着地時の評価:40cm台上から床に向かって両側下肢で踏み切り、一側下肢で着地する動作を行い、着地側下肢で静止するように指示した。着地時に静止できた場合を静止可、静止できなかった場合を静止不可とし、静止可、静止不可数の左右比較を行った。統計処理は(1)はFisherの直接確率計算法を、(2)はカイ2乗検定を行った。
【結果】
(1)knee-in陽性9肢、左knee-in陽性3肢と、右knee-in数が有意に多かった(p<0.05)。(2)右下肢静止不可2肢、左下肢静止不可8肢と左下肢静止不可数が有意に多かった(p<0.05)。
【考察】
今回の調査は、左膝に損傷をきたしやすい要因を検討するために行った。ACL損傷は膝関節外反・外旋位で頻発するといわれていることから、(1)の調査では、左の方が右に比べknee-inを有する者が多いのではないかと推測したが、結果は右に比べ左knee-in数は有意に少なかった。今回の調査は前額面からのみの評価であったため、左膝の損傷が多いこととknee-in左右差の関連は明確にできなかったと思われ、回旋要素を含めた検討が必要であったと思われる。(2)の調査では、左下肢でジャンプ着地を行った場合、静止できなかった者が右下肢での場合に比べ有意に多かった。スポーツ場面では、右下肢に比べ左下肢で着地を行った場合に身体を制御できないことが多く、左膝の損傷が多くなっているのではないだろうか。今回の調査は対象数が少なかったが(2)の結果は興味深く、今後、測定機器等を用いて具体的に検討していきたい。