抄録
【目的】投球障害肩に関して、腱板の筋力評価に関する研究は多いが、下垂位や90°外転位での評価がほとんどであり、scapula planeで行われている投球動作の評価としては機能面を考慮しているとは言い難い。今回、scapula planeでの評価が重要と考え、投球障害でもっとも出現頻度の高いAcceleration phaseに着目し、この肢位を意識したゼロポジションにおける外旋機能(以下:挙上位外旋機能)を評価したので報告する。
【対象】投球時の肩関節痛を主訴として当院を受診した23例のうちAcceleration phaseで肩関節に疼痛が生じるもの(以下:acc障害群)14名、Acceleration phase以外で疼痛が生じるもの(以下:他相障害群)9名を対象とした。なお、疾患名は問わず、測定時に疼痛が生じるものは除外した。
【方法】測定肢位は上部体幹をベッドより出した腹臥位とし、ゼロポジションを意識した肩関節150度挙上位、肘関節90°屈曲位で、肩関節を最大外旋位へ他動的に誘導した。その位置を保持するように指示を与え、保持可能な前腕と水平線との角度(以下:挙上位外旋保持角度)を水平角度計にて測定した。なお、計測は2回実施し平均値を算出した。統計学的分析にはWelch法を用い、有意水準を1%とし両群間の差を比較した。
なお、挙上位外旋機能評価法に関して、同一被験者2回の計測の相関係数はr=0.95のため、十分な再現性があると判断した。
【結果】acc群の挙上位外旋保持角度は36.8°±16.9、他相群は66.1°±7.58と、acc群は他相群に比べ有意に挙上位外旋保持角度が低下していた。また、他相群は挙上位外旋保持角度が55°以上であったのに対し、acc群の14例中11例が55°以下であった。
【考察】第30回肩関節学会において山口らは、ゼロポジションでの外旋筋力の不足は、リリースに向け肘関節伸展運動が可能となる肢位までの運動を完了できないため、肩関節内旋運動によりボールを投げる傾向があると報告している。今回、acc群にみられた挙上位外旋保持機能の低下は、肩甲胸郭周囲および外旋筋の機能低下による結果と考える。Acceleration phaseに近いこの肢位での外旋保持ができなければ、上記のようないわゆる内旋投げにつながり、このphaseでの疼痛の一因になると考えた。また他相群では、この機能の低下が見られないことから、ゼロポジションでの外旋機能は投球動作の中でAcceleration phaseで必要とする機能であることが確認された。さらに、他相群は挙上位外旋保持角度が55°以上であったことから、Acceleration phaseで発生する投球障害肩の発症閾値として、挙上位外旋保持角度55°があげられることも推察された。これは、臨床での機能評価のひとつとして、有用であると考える。