理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 326
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骨・関節系理学療法
メディカルチェックにおける下肢動的アライメントの検討
*佐藤 美緒子矢澤 由佳里佐藤 成登志遠藤 剛清水 広記山本 智章
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抄録

【目的】下肢動的アライメントの不良はスポーツ外傷や障害発生の危険性を増加させることが知られている。当院ではサッカー専門学校生を対象にメディカルチェック(以下MDC)を実施しており、その結果から我々はこれまで各評価と障害発生との関連性について報告してきた。今回評価項目の中から下肢動的アライメントを調査し、下肢関節痛との関連性に着目し検討した。
【対象】サッカー専門学校の男子学生49名98脚、年齢は19~23歳(平均20.1±0.8歳)、サッカー競技歴は平均8.9±2.5年。
【方法】MDCの実施期間は2003年12月。動的アライメントテストは立位姿勢から前方へ膝を屈曲させながら一歩踏み出し、踏み出し側の足部(第1,第2中足骨間の中点)と膝(膝蓋骨中央)の位置関係を目視にて評価した。足部に対する膝の位置関係によりneutral、knee-in toe-out(KITO)、knee-out toe-in(KOTI)の3群に分類し、各群の割合を算出した。問診により下肢関節の痛みや違和感の訴えを聴取し、股関節、膝関節、足関節にわけてその割合を算出した。動的アライメントの各群と下肢関節痛との関連性をχ2検定を用いて比較検討した。
【結果】動的アライメントテストの結果、98脚中neutralは43脚(43.9%)、KITOは54脚(55.1%)、KOTIは1脚(1.0%)であった。問診より、下肢関節の痛みや違和感の訴えは股関節2脚(KITO2脚)、膝関節14脚(KITO9脚、neutral5脚)、足関節10脚(KITO3脚、neutral7脚)であった。動的アライメント各群で下肢関節に痛みや違和感を有した割合に有意差は認められなかった(p<0.05)。
【考察】今回、サッカー選手における動的アライメントテストで約半数以上にKITOが認められた。サッカーはダッシュやサイドステップなど、急激な方向転換の繰り返しといった競技特性を有している。このためKITO動作によりスポーツ外傷や障害の危険性があると考えられる。しかし今回、下肢動的アライメントと下肢関節痛に有意な関連性は認められなかった。一般的にKITO動作は障害発生の要因となると言われているが、臨床ではKITOの傾向を示しても下肢関節痛を訴えない症例も多く経験する。KITO動作は体幹・骨盤から足部まで多関節が関与し様々な原因によって起こり得る。KITO動作における障害発生との関連性には、単にアライメントをみるだけでなく体幹固定筋や中殿筋・内外側広筋の筋力低下や関節可動域制限などの原因も踏まえ検討する必要があるのではないだろうか。またKITO動作を制御できるか否かによっても障害発生が異なるとも考えられる。今後の課題として、動的アライメントと筋力や可動域との関係を調査し障害発生との関連性を再度検討したい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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