抄録
【はじめに】一般的に40°以上の膝関節屈曲拘縮は高度屈曲拘縮と呼ばれ歩行障害の原因となり得る。今回我々は高度の屈曲拘縮をきたし,歩行不能となった関節リウマチ(以下,RA)症例に対する人工膝関節置換術(以下,TKA)を経験したので若干の考察を加え報告する.
【症例1】54歳,女性,RA歴10年以上,Larsen左右ともIV,他院にて薬物治療を受けるも徐々に膝痛,可動域制限が増悪し歩行困難となり通院不可能.当院受診時には主に四つ這いにて屋内移動しており歩行は不可能.膝可動域は右50°~80°,左50°~85°,平成14年11月29日 両膝後方関節包離開術施行し屈曲20°にてギプス固定,術後7日でギプス固定のまま歩行開始,術後14日で膝装具としROM-ex開始,固定式歩行器にて歩行可能となり術後4週で一時退院となる.平成15年1月31日両側TKA施行し両側膝蓋腱部分剥離あり術後プログラムが遅れるものの術後26日で歩行器歩行,術後32日で両側ロフストランド杖にて歩行可能,膝可動域は右5°~65°左5°~70°となり術後41日で自宅退院し近医通院となる.術後6カ月で可動域は右25°~65°左30°~80°と低下するもT字杖歩行可能となり一人で外出可能,術後1年頃より独歩可能となり満足度は高い.
【症例2】80歳,男性,RA歴30年以上, Larsen左右ともV,他院にて薬物療法のみ行っていたが歩行不能となり移動は主に車椅子であり移乗動作にも時間を要するためTKA目的で当院受診, 膝可動域は右70°~75°,左55°~95°,平成14年4月9日右TKA施行し平行棒内立位可能, 続いて4月28日左TKA施行,術後9日で歩行器歩行,術後14日で両側T字杖歩行,膝可動域は右20°~95°,左20°~105°となり術後22日で自宅退院,術後1.5年経過した現在では膝可動域は右20°~105°,左25°~110°となり両側T字杖にて屋内ADLは自立しており満足している.
【考察】RAにおいて系統的な治療を受けることなく臥床を余儀なくされる場合には屈曲拘縮は比較的速く進行し,寝たきりの生活となることもあり高度の膝関節屈曲拘縮に対しては出来るだけ速やかに拘縮除去の手段を考慮すべきであるとされており,今回の症例を通して初期治療,適切なメディケア-と患者教育が大切であると思われた.
高度屈曲拘縮に対するTKAの術後リハビリテ-ションは通常のTKAと変わりないとされているが今回の症例は術前に歩行不能であった期間が2~3カ月あり著明な筋力低下が予測されることや,上肢の変形や筋力低下も認められ立位,歩行時の膝折れに特に注意を要した.また急激な膝伸展可動域の改善による疼痛が強く出現するがリハビリテーションの継続により可動域のさらなる改善がみられることもあり長期的なフォローが必要である. よって高度屈曲拘縮膝に対するTKAも効果的であり患者の満足度も高い.