抄録
【はじめに】 足関節内反捻挫は、日常の臨床で最も多く遭遇する外傷の一つである。その多くは、特別な治療を行わなくても良好な結果をたどるため軽視されがちであるが、頑固な疼痛が長期間にわたり残存する症例もよく経験する。その要因として器質的要因がよく挙げられているが、受傷からの期間や靱帯の損傷程度との関連、また疼痛を誘発する物理的ストレスは何か、など認識されていない点が多いように思われる。今回、足関節内反捻挫後に長期間にわたり疼痛が残存した症例を対象に機能的観点から調査し、若干の知見を得たので報告する。
【対象】 平成16年6月から11月までに当院を来院した足関節内反捻挫の症例のうち、当院来院の時点で発症から3ヶ月以上を経過していたのにも関わらず、疼痛が残存していた13名を対象とした。その内訳は、男性8名、女性5名、平均年齢27.9歳であった。
【調査方法】 今回、調査した項目は、疼痛残存期間、受傷頻度、X線所見(Talar tilt angle、骨棘の有無など)、疼痛部位、非荷重での疼痛肢位、荷重下での疼痛肢位、疼痛が緩和する肢位である。なお、疼痛が緩和する肢位とは、荷重下で疼痛が緩和するテーピングによる後足部誘導を示す。
【結果及び考察】 疼痛残存期間は3ヶ月から80ヶ月で平均9.2ヶ月であった。受傷頻度は7名が2週から3ヶ月に1度程度で、約半数に相当する6名が初回受傷以降の既往がなかった。X線所見は靱帯の損傷度の指標となるTalar tilt angleが、2~15.5度、平均6.3度であり、左右差が5度以上あったのは2名だけであった。また、骨棘など変形の所見はなかった。上記の結果から長期間疼痛が残存する症例においては、受傷頻度、靱帯の損傷度とは関連が少ないように思われた。
また、疼痛部位は前外側部が5名と最も多く、外側部4名、内側部3名、後方部1名であった。非荷重での疼痛肢位は底屈3名、内反1名、外転1名であり、8名は疼痛がなかった。主訴となる疼痛を非荷重で訴える症例はなかった。荷重下での疼痛肢位は、背屈+外反7名、背屈+内反6名であった。底屈で疼痛を有する症例もあったが、全ての症例で主訴となる疼痛に背屈が関与していた。すなわち、全症例でスポーツや日常動作における踏み込み動作が主な疼痛を引き起こす原因となっていることが判明した。また、疼痛が緩和する肢位は、13名中11名が後足部内反位であった。足関節内反捻挫では前距腓靱帯や踵腓靱帯などが損傷するとされている。しかし、これらの靱帯が伸張される肢位では疼痛はなく、疼痛が緩和する肢位も殆どの症例で後足部内反位であったことから、長期間残存する疼痛は他の要因が関与していることが示唆された。