抄録
【はじめに】足関節内反捻挫はバレーボールにおいて最もポピュラーな外傷の一つである。その反面,治療については軽視されがちであり,充分な処置又はリハビリテーションを行わないまま競技を続けるケースが多い。捻挫後遺症については様々な報告があるが,捻挫後の二次的障害について述べた報告は少ない。今回我々は,捻挫経験がダイナミックアライメントにどのような影響を及ぼすかを明らかにするために,メディカルチェックを通して検討したので報告する。
【対象】下肢に骨折や外傷(捻挫以外)の既往のない中学・高校の女子バレーボール部員33名(平均年齢13.4±1.5歳)の両足66足のうち,調査時に何らかの足部障害により観察できなかった3足を除く63足を対象とした。そのうち問診にて捻挫経験のない群(非捻挫群)34足と捻挫経験のある群(捻挫群)29足に分類し,捻挫群はさらに捻挫回数2回以上の群14足と1回のみの群15足に細分した。
【方法】メディカルチェックは足関節背屈可動域(背屈ROM),下腿前傾角度,leg-heel angle(LHA),足アーチ高,下肢ダイナミックアライメントの5項目で,すべて裸足にて調査した。背屈ROMと下腿前傾角度の測定にはゴニオメーターを使用し,下腿前傾角度は一歩前荷重肢位で最大限下腿を前傾させた時の下腿と床面のなす角を測定した。LHAと足アーチ高は静止立位にて計測し,足アーチ高の評価にはアーチ高率(%)を用いた。下肢ダイナミックアライメントは膝のKnee-in・Knee-outの評価である動的アライメントテスト(動的Aテスト)を用い,測定側の片脚立位から膝を30度屈曲し,上前腸骨棘と膝蓋骨中心を結んだ延長線と母趾中央部の足部縦軸延長線との距離(cm)を測定した。統計処理は対応のないt検定と多重比較(Tukey検定)を使用し,危険率5%未満を有意とした。
【結果と考察】アーチ高率は捻挫群14.6±3.3%,非捻挫群12.6±4.2%で有意差が認められた。LHAに有意な差は認められなかったが,捻挫群は足アーチ高が高く,踵骨外反が小さい傾向があると思われた。よって捻挫群は非捻挫群と比べ,距骨下関節を介した下腿外旋の影響により外側荷重になりやすいと思われた。背屈ROMは捻挫回数2回以上群26.4±7.5゜と非捻挫群33.7±5.8゜で有意差があり,捻挫回数が多いほど可動域は低かった。一方、下腿前傾角度は有意差がなく,足関節の背屈制限を足部など他関節で補っていると思われた。動的Aテストは2回以上群7.5±3.8cm,非捻挫群4.6±3.2cmで有意差を認め,捻挫回数が多いほどKnee-inが大きい傾向であった。
以上より,捻挫群は外側への荷重偏位や足関節背屈制限から捻挫再発の危険性が増し,その代償としてダイナミックアライメントにも変化をきたす可能性が示唆された。よって,選手や監督には捻挫予防と同時に,足部や膝関節などの二次的障害を視野に入れた指導及び総合的アプローチが必要と思われた。