抄録
【目的】
シンスプリントは多くのスポーツ選手に出現する慢性スポーツ外傷の一つである。シンスプリントを発症した場合、その治療には数ヶ月そして1年以上を要することもある。シンスプリントの治療は運動療法、物理療法、足底板療法などが挙げられる。また、安静を強いられるケースも少なくない。一方、シンスプリントに対する治療法としては装具を用いた報告はほとんどない。本研究では、これまでと異なる発想で装具による治療法を考案し、その短期的効果について検証した。
【対象と方法】
対象は高校生のスポーツ選手7名、10足(男子4名、5足、女子3名、5足)とした。平均年齢は16.2±0.8歳であった。競技種目は陸上短距離選手、野球、バスケットボール、フェンシングであった。対象にはインフォームドコンセントを行い、同意を得た上で本研究に参加して頂いた。
今回開発したシンスプリント用装具は疼痛軽減を目的としている。疼痛軽減のメカニズムとしてはヒラメ筋、長趾屈筋などの付着部である脛骨内側縁を圧迫し、骨膜への負担を軽減できるよう、下腿全体を覆うような構造とした。下腿全体を覆うことにより、前脛骨筋や下腿三頭筋などの機能を阻害しないよう、素材は伸縮性のあるものを使用した。
測定は日常的に行われる約2時間の練習前後に行った。練習前の測定値は装具未装着の状態を表し、練習時には今回開発した装具を装着し、練習後、再度測定を行った。
測定項目はWalsh scale(stage1~4)、Visual analog scale(VAS)による疼痛の程度を評価した。足関節底屈・背屈の関節可動域(ROM:°)及び等尺性筋力測定(ハンドヘルドダイナモメーター:N)を行った。その他、アーチ高率(足長に対する舟状骨粗面の高さを百分率で表したもの:%)、leg heel angle(下腿長軸と踵骨のなす角度:°)についても計測した。また、運動能力については50m走(秒)、垂直跳び(cm)、反復横跳び(回数)を測定した。
データは練習前後の値を比較した。統計処理はpaired-t testを行った。有意水準を5%未満とした。
【結果とまとめ】
Walsh scaleは練習後(装具装着後)、全例で改善した。疼痛は練習後、有意に低下した(p<0.05)。アーチ高率及び反復横跳びは練習後、有意に高値を示した(p<0.05)。その他、足関節のROM、等尺性筋力、leg heel angle、50m走は練習後、有意な変化を認めなかった。以上より、本装具の短期的効果としては以下のことが明らかとなった。1)脛骨内側部の疼痛を軽減する。2)装具装着で足関節の運動を阻害しない。3)装具装着で内側縦アーチが上昇する。4)装具装着による運動能力の低下は認められない。