抄録
【目的】本研究では、健常者を対象とし、歩行時における内側、外側楔状足底板(以下、内側、外側ウェッジ)の使用に伴う下肢各関節の角度変化を算出し、その影響について検討した。
【方法】対象は、実験の主旨を説明し同意を得て参加した神経学的、整形外科学的な既往の認められない22~24歳の男女各5名とした。方法は、メトロノームを用いて一定の速度で平地歩行を行わせ、裸足、内側ウェッジ(高さ7mm)装着、外側ウェッジ(高さ7mm)装着の3種の歩行様式を撮影した。その際、反射マーカーを仙骨部、左右上前腸骨棘・大腿中央・膝関節外側裂隙・下腿中央・外果・踵骨部・第2中足骨骨頭に貼付した。右踵接地から右足尖離地までのデータを採用し、股関節・膝関節・足関節それぞれについて、矢状面・前額面上での角度変化を3次元動作解析装置にて算出し、裸足時と各ウェッジ装着下で比較・検討した。
【結果】股関節においては、男女ともに全ての歩行様式の矢状面、前額面での角度変化に有意差は認められなかった。男性群の膝関節前額面での角度変化について、裸足8.8±4.6°、外側ウェッジ装着下では4.7±2.2°であり、踵接地期における膝関節軽度外反位からのさらなる外反方向への角度変化は有意に小さかった(p<0.05)。また、男性群の足関節前額面での角度変化について、裸足14.3±2.7°内側ウェッジ装着下では10.3±1.0°であり、踵接地期の足関節外反位から足底離地期の内反方向への角度変化は有意に小さかった(p<0.05)。女性群については、全関節及び各面での角度変化に有意差は認められなかった。
【考察】男性群において外側ウェッジ装着下では、裸足時と比較し膝関節の外反方向への角度変化が有意に小さかった。これは、足関節外反方向への角度変化が裸足時より大きい傾向を示していることから、外側ウェッジ装着下では足関節外反方向への影響が大きく、直接的に膝関節外反モーメントを大きくする効果は少ないことが推察された。また、男性群において内側ウェッジ装着下では、裸足時と比較し足関節の足関節外反位から内反方向への角度変化は有意に小さかった。これは、内側ウェッジを装着することで、踵接地期における距骨下関節回内角度が減少し、その位置からの距骨下関節回外方向への角度変化に差がなかったためと考えられた。同条件での膝関節外反方向への角度変化について、有意差はなかったものの裸足時と比較し小さい傾向を示した。これは、床面に最も近い足関節がより安定したことにより、膝関節における前額面での安定性も得られたことが考えられるが、これについては関節モーメントを算出していないため、今後さらに検討する必要があると考える。女性群については、内側・外側ウェッジによる下肢各関節への角度変化に対する影響は認められなかった。今後、柔軟性など女性特有の因子の影響について検討する必要がある。