抄録
【はじめに】脱出型腰椎椎間板ヘルニアの自然吸収過程における理学療法の経験から、逃避姿勢としての側弯(以下側弯)を呈する症例を多く認めた。また、臨床場面において、アライメントの矯正により疼痛の増強を来たした症例を多く経験した。今回は、側弯の原因として考えられる神経緊張徴候・股関節可動域と側弯度との関係について検討し、ヘルニアの自然吸収過程における理学療法の方向性について考察した。
【対象】平成15年4月から平成16年10月までの脱出型腰椎椎間板ヘルニア患者のうち、神経根性疼痛を有し、側弯を認めた16例(男性15例 女性1例 年齢37.1±12.9歳)を対象とした。ヘルニア高位はL4/5 10例、L5/S1 16例であった。ヘルニアのタイプはsubligamentus extrusion 4例、transligamentus extrusion 9例、sequestrasion 3例であった。施行された保存療法は、注水 10例、神経根ブロック 6例であった。また、外側型ヘルニアと明らかに左右両側にヘルニアを認めた症例は対象から除外した。
【方法】各症例のX-P前額面における側弯度をcobb法により計測し、坐骨神経痛性側弯との関係を明らかにするためにSLRでの神経緊張徴候と側弯度との関係を検討した。股関節可動性に関しては、多くの症例に認めた屈曲・内転・内旋の可動域を計測し、側弯度との関係について検討した。
【結果】側弯は全例ヘルニア脱出側が凸のアライメントを呈していた。SLRでの神経緊張徴候と側弯度との間に相関は認めなかった。股関節可動性と側弯度との関係については、股関節屈曲・内旋可動性との間に相関は認めなかったが、内転可動性との間に相関を認めた(p<0.05)。
【考察】神経緊張徴候と側弯度との間に相関がなかったことは、脱出型ヘルニアでの側弯は坐骨神経痛性側弯のみではなく、側弯により椎間孔を開大させることで、神経根を除圧しているものと考えられる。したがって、腰椎椎間板ヘルニアの自然吸収過程において、神経根性疼痛が残存している時期のアライメント矯正には注意が必要であると考えている。さらに、ヘルニアの自然吸収が進むにつれて神経根性疼痛が消失し、殿部痛が残存する症例を多く経験するが、疼痛の局在のみで判断した場合、椎間関節に起因するものである場合が多い印象をうける。この場合、神経根性疼痛が出現しない範囲での積極的なアライメント矯正が必要であると考えている。股関節可動性に関しては、前額面アライメントと関係の深い内転可動性と側弯度との間に相関を認めた。このことは、アライメント矯正が困難な期間における理学療法として、股関節可動性改善の必要性を示唆するものと考えている。