抄録
【目的】思春期特発性側弯症(AIS)の治療体系において、経過観察と運動療法は第一次選択とされてきたが、最近では運動療法の効果を疑問視する論議もあり、科学的な評価に基づく理学療法の確立が望まれている。AISは脊椎骨の側方の偏位と軸方向の回旋を伴う脊柱の三次元変形であり、姿勢性の変化は前額面、矢状面に起こる。脊柱の側屈や回旋運動時には、椎間関節の関節面の向きや適合性により連結運動が起こり、それは椎間の不安定性や変形、脊柱固定術により影響を受けると言われているが、動的にAISの脊柱の分析をした報告は少ない。そこで今回、三次元動作解析装置を用いてAISの脊柱の側屈・回旋運動の評価を行った。
【方法】対象は健常群10名、平均年齢19.7±0.9才と、AISおよび姿勢性側弯症と診断された側弯群9名、平均年齢15.5±2.8才とした。側弯群のX線評価は全て整形外科受診時に撮影されたものを使用し、立位時コブ角は26.9±17.5度(6-63度)であった。対象の本人および未成年に対しては、保護者にも説明をして同意を得た。
被験者のC7, T2, T5, T8, T10, L1, L4, S1の棘突起部にマーカーを貼付し、骨盤を徒手的に固定して開脚自然立位から左右への側屈運動と回旋運動を2セット行わせた。三次元動作解析装置ユニメック社製UM-CATを用いて各運動を5秒間撮影し、デジタルデータに変換された各標点の三次元相対的位置座標から前額面、矢状面における各マーカーの上下3点間の角度Joint1-6と、上位胸椎、胸椎、腰椎の角度を算出した。健常群において測定された8回の運動開始時の前額面、矢状面のJoint1-6について級内相関係数(ICC)を統計パッケージSPSS j 10 を用いて検出した。各運動の統計分析は、2回施行した角度変化の解析値の平均を用いて、統計パッケージStat View j 5.0を用いて有意水準を0.05として施行した。
【結果・考察】健常群における立位姿勢のICCは、矢状面のJoint 4が0.766で、他は全て0.81以上と測定に高い類似性があったことを示した。側屈時の前額面変化は、健常群では全て左右差はみられず、側弯群では胸椎部の右側屈角度が左に比べて大きかった。側屈時の矢状面変化は、両群ともにばらつきが大きかったが全体的に屈曲傾向であった。側弯群の右側屈時に上位胸椎の屈曲と胸腰椎部の伸展がみられた。回旋時の前額面変化は、両群ともに上位胸椎が下位と比べて大きく同方向への側屈を示し、健常群の腰椎部は上位より値が小さかったが、側弯群の左回旋は上位と差がなかった。回旋時の矢状面ではばらつきが大きかったが、上位胸椎は伸展するが下位では屈曲傾向が見られた。側弯群の脊柱では非連結運動の存在が伺われ、AISの理学療法プログラムの作成の際に考慮する必要があると思われた。