理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 596
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内部障害系理学療法
上腹部開腹術患者の呼吸機能と筋力について
*上村 洋充梅田 幸嗣笹沼 直樹森下 慎一郎森 明子北林 豊上谷 清隆真渕 敏道免 和久
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キーワード: 上腹部開腹術, 肺機能, 筋力
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抄録
【はじめに】 上腹部外科患者に対する術前後の呼吸理学療法の必要性は広く認識されており、現在ではスタンダードな治療法として用いられている。そしてこの手術は開胸を伴うような食道や心臓の手術と違い多くの施設で経験する術式である。呼吸理学療法の実際は術前から開始し、術後の肺合併症の予防に努め、退院まで全身的な運動の取り組みを継続されることが一般に行われる。ここで肺合併症の有無やADLの自立度などは明確にすることが容易であるが、機能レベルでの回復の程度は明確でないことが多い。そのため、退院するまでの間、用手的呼吸介助手技といった他動的なものから歩行練習のような全身運動までさまざまな内容を根拠なく継続されている場面も少なくない。その中でPTが実際に何をどの程度行うべきか検討する必要がある。その一助として、今回我々は術後問題なく経過した患者の術前後の呼吸機能や筋力を通じ、傾向を観察したので報告する。
【対象】 上腹部開腹術患者8例(男性6例、女性2例)、平均年齢67.6±10.1歳。部位は胃切除4例、大腸切除1例、十二指腸切除1例、肝切除1例、膵切除1例。術前ADL問題なし。術前肺機能は拘束性障害2例、混合性障害1例。術後は全例、肺合併症なく経過。第2~3病日に立位、歩行開始可能であった。退院時ADL問題なし。
【方法】 術前後に体重、肺機能、呼吸筋力、下肢筋力(最大等尺性膝伸展筋力)、握力を測定し、術前後比を見た。下肢筋、握力は利き手足とした。理学療法は一般的な術後プログラムを実施。その中で、第7病日以降は深呼吸や動作、歩行の指導中心の内容とした。
【結果および考察】 退院時測定は平均23±4.6病日に実施。食事摂取は全例可能、体重は平均2.5±1.9kgの減少を認めた。退院時のVCは術前比で平均87.5±0.1%と他の報告と同程度の低下であった。呼吸筋力は最大吸気、呼気筋力とも術前比で約94%、下肢筋力は術前比約86%、握力術前比約99%であった。今回、術後問題なく経過した症例に対し早期離床を開始した上で指導中心の理学療法で対応した。結果、肺機能は一般的な回復を示し、全身運動のみでも筋力は下肢筋で若干低下傾向を示すのみで他はほぼ問題なかった。経過良好例は術後、早期より下肢筋力トレーニングや持久力に主眼をおいて実施することが望ましいと考える。ただし、術後1週以内は状態の変化が起こりやすいため、呼吸状態に十分な観察と対応が必要である。そして、今後は経過良好患者の条件を明確にすることで対象を選別し、病棟スタッフの介入や十分な計画、指導の上でより早期での理学療法の終了など検討する必要があると考える。
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© 2005 日本理学療法士協会
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