抄録
【はじめに】食道癌周術期にリハビリを行うことで呼吸器合併症予防、在院日数短縮が可能となることは報告されている。当院では2004年1月から食道癌患者の周術期リハビリを開始した。そこで、2症例について検討したのでここに報告する。
【症例紹介・経過】症例1:62歳男性。胸部中部食道癌(T4N3M1、stageIVb)、両側多発性肺転移の診断にて食道亜全的・胃管再建術(胸骨後経路)、右肺S3・S8部分切除を施行。術前6MDは500m、PS(Performance Status)はgrade0、BMIは24.4、血清アルブミンは4.2であった。第1病日に端坐位、第2病日にベッドサイド起立、第4病日に歩行練習を開始し、第6病日には自立歩行を獲得した。第14病日にリハビリ終了、第15病日に退院となった。退院時6MDは450m、PSはgrade1であった。
症例2:72歳男性。胸部中部食道癌(T2N2M0、stageIII)の診断にて食道亜全的・胃管再建術(後縦隔経路)施行。合併症に肺気腫あり。術前6MDは430m、PSはgrade1、BMIは16.5、血清アルブミンは3.5であり、未告知のため手術に対するモチベーションは低かった。手術室にて抜管したが、主治医の意向により第3病日まではベッド上安静であった。第4病日にリハビリ開始となり、ベッドサイド起立まで実施できたが、胸水貯留による呼吸困難とディコンディショニングによる起立性低血圧、患者のリハビリ拒否があり、歩行練習開始は第7病日、自立歩行獲得は第14病日と遅延した。その後、筋力・持久力トレーニングを実施し、第34病日にリハビリ終了、第36病日に退院となった。退院時6MDは350m、PSはgrade1であった。
【考察】術後早期から坐位、起立、歩行を実施することで、肺炎、無気肺、深部静脈血栓、ディコンディショニング等の合併症を予防できるため、当院での食道癌術後患者のリハビリは麻酔科医によるPCA(patient-controlled analgesia)を用いた術後疼痛管理の下、積極的な離床を中心に行っている。症例1は順調に離床が進んだため、呼吸器合併症を起こさず、早期退院が可能であった。しかし、症例2は肺気腫合併、低栄養、モチベーション低下と術前から問題を抱えており、さらに第3病日までベッド上安静であったため、離床が遅延し、呼吸器合併症は無かったものの在院日数は延長した。術前の状態からハイリスクと判断されたからこそ、術後早期から離床を行うべきであったと反省される。また、周術期リハビリを開始して間もなかったこともあり、理学療法士、外科医、麻酔科医、看護師の連携が不十分で、チームとしてのアプローチが不足していたことも問題点として挙げられる。今後これらを改善し、食道癌の周術期リハビリを充実させていくよう努力していく。