抄録
【はじめに】我が国における心移植症例は21例におよぶ。当院では2002年10月より心移植実施施設に認定された。今回、心臓移植症例の理学療法を経験したので報告する。
【症例紹介】症例は24歳女性、診断は拡張型心筋症。末期的重症心不全のため2001年9月11日、東洋紡社製国循型左室補助循環装置(LVAS)を装着した。心電図はVf波形を呈し、心機能は改善なく心移植待機となった。待機期間中のADL動作獲得・心移植を想定しての廃用症候群改善・予防目的に運動療法を行ったが、ADLは2年10ヶ月間殆ど、十分なギャッチアップ座位保持困難なベット上の生活を強いられていた。LVAS pump交換7回の後、2004年7月5日、心移植された。
【移植後経過】第2病日に人工呼吸器離脱後、自己排痰目的に呼吸理学療法、翌日よりレジスタントレーニングを開始した。第5病日:端座位、第9病日:立位・足踏み、第16病日よりICU内で歩行練習開始した。第30病日より廊下歩行(歩行器使用)練習開始した。病室内ADLは、第33病日に伝い歩きにて移動動作獲得し、第52病日には介助下にてシャワー浴可能となった。拒絶反応出現せず全身状態安定・ADL動作も独歩可能となったため、第75病日に退院、理学療法は外来フォローとなった。
【理学療法の実際】この症例は待機期間中、ベット上での生活であったため、心移植後第42病日経過しても廃用性筋力低下が著明であり積極的なトレーニングが必要であった。心移植後の運動療法において、重要な点は除神経心であるため、運動に対する循環動態の反応の遅延が出現することであり、心拍数での運動処方が困難である。このため、運動療法は心電図モニター監視下にて不整脈の確認、リスク管理・運動処方には自覚的運動強度(borg scale)を用いた。レジスタンストレーニングプログラムはstrength ergo(三菱社製)にて、疲労の軽減を目的にassist moodを用い効率の良い筋力強化を図ろうと考えた。回転速度を20r/minに設定し、assist mood(1min)→(isokinetic mood(10回)+assist mood)/min×10セット→assist mood(3min)にて計14分間として6回/w(外来は2回/W)施行した。
【筋力結果】トレーニング前の脚伸展最大トルクは右脚・左脚:10.0・9.5 N・mであったがトレーニング2週間施行後には、右脚・左脚:19.8・19.7N・mと筋力強化が図られ、3ヶ月後には右脚・左脚25.9・23.1 N・mとなった。
【まとめ】今回、当院第一例目の心臓移植症例の理学療法を経験して、心臓移植待機期間を長期強いられる現状において、心移植後の理学療法は十分なリスク管理を行えば積極的な運動療法は可能であることがわかった。