抄録
【目的】
開胸による肺葉切除術を施行した肺癌患者に対する呼吸理学療法において,介入頻度の違いによる効果の差違を検討することを目的とした.
【対象】
研究の同意が得られた肺癌患者58例を手術前に先立って無作為に2群に割り振った.通常の看護ケアに理学療法士による呼吸理学療法介入を1日1回行う群をコントロール群とし,呼吸理学療法介入を1日3回行う群を介入群とした.開胸肺葉切除術を実施した症例は44例(平均年齢65.5歳)であり,コントロール群25例,介入群19例であった.14例は肺葉切除術にいたらなかった症例などであり,検討から除外した.切除部位は右上葉14例,右中葉4例,右下葉9例,右上下葉2例,左上葉7例,左下葉8例であった.
【方法】
当院の呼吸理学療法は,全症例に対して術前は排痰指導(Active Cycle of Breathing Technique:ACBT),呼吸練習(深呼吸,インセンティブ・スパイロメトリー)を行った.術後は手術当日から介入し,排痰(ACBTおよび呼吸介助)に加え,離床を中心とした呼吸理学療法を施行した.検討項目は,術後呼吸器合併症(無気肺,感染症,その他)の有無,肺活量(VC),酸素投与期間,術後からの歩行開始および歩行自立までの期間であった.VCは術後1週間毎日測定した.
【結果】
術後呼吸器合併症は,コントロール群において無気肺1例,感染症3例,その他2例の計6例であった.介入群においては術後呼吸器合併症を認めず,2群間で有意差(p=0.0494)を認めた.また,VC,酸素投与期間,術後からの歩行開始および歩行自立までの期間はコントロール群と介入群の間に有意差を認めなかった.
【結語】
肺葉切除術患者における理学療法士による高頻度の呼吸理学療法介入は,術後呼吸器合併症を減少させることが示唆された.高頻度の呼吸理学療法介入は診療報酬に見合った介入方法であると考えられた.