抄録
【はじめに】新生児に対する呼吸理学療法の有効性や危険性に関しての報告は少なく,多くの施設で善かれと思って施行されている呼吸理学療法が児に対して過剰な刺激になっていることも十分にあり得る.今回,カルテを遡及的に調査し再検討することによって,その有効性,危険性,注意点について検証した.
【対象】1986年1月から2002年12月末までの17年間に,石川県立中央病院新生児集中治療室において人工呼吸器からの円滑な離脱を目的として呼吸理学療法が処方された低出生体重児.
【方法】以下の項目につき抜粋した.第一に診断名,合併疾患,出生体重,出生時在胎週齢,人工呼吸管理期間,姿勢管理,呼吸理学療法施行期間など.第二に抜管前後の気道分泌物の量,徐脈の有無と呼吸様式の変化,経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)低下の程度.第三に呼吸器合併症,非呼吸器合併症,再挿管の有無と再挿管に至った理由,死亡の有無とその理由.なお呼吸器合併症とは無気肺,肺炎,気胸,肺気腫とし,非呼吸器合併症とは頭蓋内出血,心不全,肋骨骨折と定義した.
【分析】1986年から1987年までの2年間を1期,サーファクタント認可後の1988年から1995年までの8年間を2期,ドキサプラム使用禁止後の1996年から2002年までの7年間を3期とし,各期で検討した.
【結果】17年間に299例の低出生体重児が対象となった.超低出生体重児は90例,1000g以上1500g未満の児は109例,1500g以上の児は100例であった.各期では1期が8例,2期が155例,3期が136例であった.抜管後無気肺の発症は1期では50%と高率であったが,2期では4.5%,3期では3.7%へと激減していた.抜管後の非呼吸器合併症では,心不全が2期2例,3期4例にみられ,頭蓋内出血が1期1例,2期1例,3期2例に発症していた.再挿管の内訳は,1期では全4例が無気肺によるものであり,2期14例では無気肺は14%に減少し,代わって64%が無呼吸を起因としていた.3期15例では無気肺が1例(6.7%)のみで無呼吸も3例(20%)に減少していたが,喉頭狭窄・声門下狭窄によるものが5例(33%),心不全によるものが4例(26.7%)認められた.肋骨骨折は全期間を通じて認められなかった.気道分泌物の排出量は呼吸理学療法施行前に比べ施行後では有意に増加していた.3期の超低出生体重児では出生体重1000g以上の児に比べ,抜管後の無呼吸が有意に重症化しSpO2低下の頻度も有意に高かった.
【結論】呼吸理学療法は気道分泌物の排出には有効であるが,呼吸状態の安定に関与する因子は経年的に変化してきており,特に超低出生体重児への施行に際しては細心の注意が必要である.新生児呼吸理学療法が児の転帰に与える影響に関してはなお今後の検討を要するが,当院では手技による肋骨骨折はなく安全に施行されていたと考えられた.