抄録
<はじめに>
現在肺炎は日本の死亡原因の第4位であり、生命を左右する疾患の1つである。その原因では誤嚥性肺炎が徐々に増加しており、その防止は重要な課題である。今回は、誤嚥との関連を検討することを目的に、当院に肺炎で入院した症例を調査し、若干の知見を得たので報告する。
<対象と方法>
1999年4月から2004年3月までの5年間で、肺炎の診断にて当院に入院し、理学療法が処方された症例で、カルテ検索可能であった79名(男性63名・女性16名、平均年齢は54±19.7才)を対象とした。方法は、入院カルテより、性別・年齢・基礎疾患名・誤嚥性肺炎の有無・罹患前後の栄養摂取形態・ADL等を後方視的に調査・分析した。
<結果>
1、調査した全症例は、肺炎を罹患する前に基礎疾患が認められた。基礎疾患の割合は、脊髄損傷30%(頚髄損傷を含む)、精神発達遅滞29%(ダウン症含む)、脳損傷20%(頭部外傷を含む)、神経難病13%、その他7%であった。
2、誤嚥性肺炎と診断された割合は、全肺炎患者の約50%であった。疾患別の誤嚥性の割合は、脳損傷80%、精神発達遅滞61%、神経難病50%、脊髄損傷21%であった。
3、罹患前の栄養摂取形態は、経口74%、経口・経管栄養併用10%、経管栄養のみ16%であった。罹患後、退院時には、経口57%、経口・経管栄養併用7%、経管栄養のみ24%で、その他死亡退院が10%あった。
4、肺炎罹患前のADLの機能は、自立14%、要介助46%、全介助40%であり、それぞれの誤嚥性肺炎の割合は、自立18%、要介助50%、全介助69%であった。
<考察>
誤嚥は必ずしも肺炎に繋がらないが、誤嚥の防止は肺炎のリスクを減らす要因と考えられる。本調査においても、約50%の症例が誤嚥性と診断されており、その重要性が示された。脳損傷は最も誤嚥性肺炎の割合が高かったが、その約50%に診断上嚥下障害が認められなかった。このことから潜在的に嚥下障害を有している可能性が高いと考えられ、嚥下障害が認められなくても嚥下機能に着目する必要があると考えられた。
栄養摂取形態では、罹患前に経管栄養のみのケースでも、約57%に誤嚥性肺炎が認められた。経口摂取を行わないケースでも唾液の流入や胃食道からの逆流による誤嚥が考えられた。これらに対して、我々理学療法士は誤嚥物を喀出するための呼吸機能の向上やポジショニングの工夫に努める必要があると考えられた。
また、罹患前のADLの機能では、介助量が増えると誤嚥性肺炎の割合が高い傾向が認められ、全身の身体能力の低下や座位姿勢の不安定性が誤嚥を引き起こした可能性があった。全身の機能維持・向上や座位姿勢の安定にも努める必要があると考えられた。