抄録
【目的】Functional Reach Test (FRT)は、動的バランス能力を表す臨床指標として広く用いられ、歩行速度などの身体機能との関連が報告されている。しかしながら、FRTには1)ヤードスティックを設置する煩雑性、2)測定値を瞬時に目視によって読み取るための測定精度低下、3)器具固定スペースの必要性から、在宅や病棟では実施しにくいという困難性、などの問題点が挙げられる。これらの問題点を解消する方法として我々は、伸縮可能な指示棒を用いたModified Functional Reach Test (M-FRT)を考案した。本研究では、M-FRT身体機能との関連を求め、M-FRTの妥当性について検討した。
【対象】対象者は10 m歩行が可能な65歳以上の高齢患者35名(男性17名、女性18名、年齢76.4±6.1歳)であり、本測定の主旨に同意が得られた者である。片麻痺や荷重関節痛などの運動器疾患や痴呆の合併がみられる者は対象から除外した。
【方法】M-FRTは市販の12.4 cm から60.0 cmまで伸縮可能な指示棒(アンテナボールペン; レモン社製)を用いて測定した。測定は最長(60.0 cm)に伸ばした指示棒を利き手で持ち、肩関節を90度挙上し、指示棒の先端が壁に着くように立位位置を調整する。次にできるだけ前方へリーチし、短縮した指示棒の長さをメジャーで計測し、リーチ距離を求めた。身体機能の測定項目はFRT、歩行速度、等尺性膝伸展筋力、および律動的な側方重心移動条件下での動的立位圧中心動揺(動的重心動揺)とした。FRTは原法に準じて行い、前方へのリーチ距離を測定した。歩行速度は、室内10 m最大歩行速度(m/sec)を測定した。等尺性膝伸展筋力は、アニマ社製徒手筋力測定器μ-TAS MF-01を用い、腰掛け座位で下腿を下垂させた肢位での筋力を測定し、体重比(kg/kg)を求めた。動的重心動揺の測定は、アニマ製重心計グラビコーダ GS-3000の上に両側踵部を10 cm離した立位をとり、20秒間、メトロノームに合わせて50回/分の速さで体幹を左右方向にできるだけ大きく傾斜させるように教示した。そして左右方向への圧中心動揺標準偏差(cm)を求めた。いずれの測定も2回実施し、最大値を採用した。統計的手法は、ピアソンの相関係数を求めた。
【結果および考察】M-FRTと各身体機能項目の間には、それぞれ有意な正相関を認めた(FRT r = 0.851、 p < 0.001、歩行速度 r = 0.708、p < 0.001、等尺性膝伸展筋力 r = 0.539、p < 0.001、動的重心動揺 r = 0.567、p < 0.01)。FRTも同様の結果が得られた。これらのことからM-FRTは歩行速度、等尺性膝伸展筋力、動的重心動揺との関連があり、妥当性に問題ないと考えられた。