2020 年 2020 巻 30 号 p. 92-102
小学校の児童を対象に行う放射線教育は難しい内容を含んでいる.このため,とりわけ小学校低学年の児童の指導は困難を伴うことが多い.また,小学校低学年を対象にした放射線教育は「管理・防護」に重点が置かれ,放射線に関する広い知識の獲得を目指したり,身近な自然や人とのつながりに立脚した視点が欠けている場合が散見される.本研究ではこうした課題を克服するため,低学年を対象に,生活科の視点に立った放射線の学習展開の構築を試みた.開発した授業プログラムは「放射線の基本の理解」「除染シミュレーションを用いた実験」「霧箱実験」からなり,具体的な活動を通して放射線と児童の生活について学習させる内容となっている.実践を行ったところ,児童は放射線の基本的な性質だけでなく放射線による被ばく低減のための取り組みや防護についての理解を深めることができた.