抄録
【はじめに】当施設では、ICFの考え方を個別リハビリに反映させることを積極的に試みている。今回は、その中でも「環境因子」と「個人因子」の影響に着目し、入所から在宅復帰まで関わったケースについて、若干の客観的データを踏まえ考察したので報告する。
【症例】82歳、女性。H15.10にうっ血性心不全発症、同年、脳梗塞発症し左片麻痺と診断される。性格は、温厚であり、活動的で庭の手入れを趣味としていた。H15.11入所時、Brunnstrom Stage(以下B/S)は、上肢・下肢・手指それぞれ5レベル。Barthel Index(以下BI)70点、10m歩行31.03秒、握力右6.4kg・左不可、うつ状態自己評価Self rating depression scale(以下SDS) 56点であった。
【理学療法経過】入所後、個別リハビリとして、排泄動作・歩行練習・精神面のケア等開始。しかし、2ヶ月経過するも、身体機能面やリハビリへの意欲も少なく、一進一退の状態であった。その後、以前の生活状況を細かく情報収集し、やる気のきっかけとして個別リハビリに、以前から趣味でもあった園芸を導入した。園芸を行うにあたって、自宅と同様に入り口に段差を作り、草取りでは、床にあるプランターを自宅庭の地植えと想定し、床からの立ち上がりを含んで実施した。本人には、毎朝の水かけ・草取り等に責任を持ってもらい、毎日の日課として行動してもらった。3ヶ月経過し、B/S変化なし。BI90点、10m歩行18.46秒、握力右10.3kg・左不可、SDS47点とADL、心身機能面において大きく向上が見られた。その後、自宅退所となり、週1回の訪問リハビリを開始。リハビリ時自宅内草むしり、水かけを実施。訪問以外の日にも園芸を実施しているが、段差に見守りが必要であり、自宅の広い庭では支えになるものがなく、地面に石があることや土壌が悪いことから、床からの立ち上がりが困難な状態であった。3ヶ月経過後、B/S変化なし。BI85点、10m歩行は、23.69秒、握力右8.6kg・左不可、SDS50点と、退所前よりADL、歩行速度、握力の低下が見られた。
【考察】この患者にとって園芸活動は、リハビリメニューというより、まさに一度失った自身の生活一部である。それを取り戻そうとすることは、単なるリハビリメニューの消化とは大きく異なり、大変効果的に意欲や自立心が引き出され、機能レベルの向上に繋げることができた。一方、自宅退所後に活動の低下が示唆されたことは、まさしく環境因子が生活機能レベルに及ぼす影響力の大きさであろう。ゆえに個人因子に即した環境因子の設定が大変重要であり、さらにリハビリプログラムは、「環境限定型」にとどまらず、「環境応用型」にまで踏み込む必要があると強く感じたので、今後も継続研究し追報告したい。