理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 823
会議情報

生活環境支援系理学療法
当院における脳血管障害患者の転倒事故について
―転倒の背景因子と院内での転倒事故対策活動―
*吉本 好延野村 卓生吉村 晋田村 千恵堅田 裕次平賀 康嗣山下 明広佐々木 秀幸明崎 禎輝浜岡 克伺香川 宗祐梶谷 充
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抄録
【目的】医療事故の中でも「転倒」は,骨折や脳外傷など重大な後遺症に繋がる可能性が高く,転倒を予防する対策のみならず,転倒の傷害度を軽減させるという観点からも対策が必要と思われる。転倒に影響する患者自身の要因は,改善に時間を要することから,チームとして転倒を予防する職場環境の構築が重要である。今回,当院で転倒事故回数が最も多かった脳血管障害患者について,転倒事故の背景因子を中心として転倒を予防,転倒後の傷害度を軽減できるかを検討し,チームアプローチでの転倒事故対策(以下対策)を紹介する。
【対象と方法】平成15年に当院に入院した脳血管障害患者を対象とし,院内診療録より転倒状況,背景因子(転倒時の場所,時間帯,介護者の有無など)を調査した。転倒の傷害度については国立大学医療安全管理協議会(以下国大協)の影響度分類を用いて,背景因子と共に検討した。また,身体因子8項目(性別,年齢,運動麻痺,失語,失認,痴呆)についても同様に検討した。得られた結果を関連部署と討議し,転倒予防,転倒後の傷害を軽減させることを目的にチームアプローチでの対策を構築した。
【結果】患者30名の転倒の積算件数は,1年間に96件であった。延べ96件の転倒事故の傷害度は,国大協分類レベル1群62件,レベル2群14件,レベル3群20件に分類された。
レベル3以上の事故について,20件中8件はベッドからの転落であり,歩行可能症例が四点柵を乗り越えた,頭部ベッド柵を外しての転落等であり,全例が口頭指示による理解が困難な症例であった。7件はベッド周辺での転倒であり,多くは移動・移乗動作自立レベルであったが,キャスター付きの床頭台を支持してベッドと車椅子間の移乗中,立位で尿器採尿中等,支持台が不安定であったことが一要因の事故であった。2件はトイレでの転倒であり,介護者の監視下でトイレから車椅子へ移乗中の転倒が発生していたが,介護者の担当患者ではなく,患者の身体状況を把握していなかった。また,転倒後の傷害度には年齢に有意差が認められ(1群<2群<3群),先行研究を支持する成績であった。
【考察】当院における対策は, 軽度の意識障害か痴呆で体動の激しい患者を対象に,注意・安全意識の啓発, ベッド柵,低床ベッド等の物的対策を実践している。しかし,レベル3以上に分類された事故の多くは,従来からの対策だけでは防止困難であり, 改善可能な問題点について,実施可能な対策を各論として構築していくことが重要であった。介護者が付き添う中での転倒事故は,改善が大きく可能と考えられ,医療者相互に共通認識できる簡便な情報伝達シート作成,患者携帯,患者及び家族への転倒防止の教育が考えられた。また,ベッドサイドでの患者の自力行動による転倒にも対応できるように,患者特性に応じて物的対策を明記した療養環境チェックリストを作成し,常時視認可能な場所に設置し,チームとして転倒に取り組む体制を構築した。
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© 2005 日本理学療法士協会
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